【小説】綿矢りさ「手のひらの京」【感想・あらすじ】

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ひとり言
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ご挨拶

こんにちは、こんばんは、ちまです。
大掃除でエアコンの掃除をしました!動きが悪くなっていた部分を分解してもらって旦那に直してもらいました。今は快調に動いてます♪
今日お話しするのは、綿矢りささんの「手のひらの京」です。

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あらすじ

京都で生まれ育った奥沢家の三姉妹の日常生活を軸に物語は進みます。
図書館員の長女の綾香は、おっとりとしていますが、結婚に少し焦りを感じています。企業に勤める次女の羽依は、気が強く職場での人間関係に悩んでいます。大学院生の三女の凛は、京都の生活に息苦しさを感じていて、卒業後は京都から出たいと思っています。
三姉妹は、悩みながらもそれぞれの道を見つけて行きます。
三姉妹の日常を通して、京都の歴史や風土、文化などを織り込みながら、家族や仕事、恋愛、人間関係などが柔らかい文章で綴られ、京都を感じることの出来る物語です。

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ひとり言

綿矢りささんの「手のひらの京」を読みました。
物語は、京都で生まれ育った奥沢家の三姉妹の日常生活を軸に進んで行きます。
図書館に勤める長女の綾香は、おっとりとしていますが、三十歳を過ぎ結婚に少し焦りを感じています。
一般職で一流企業に勤める次女の羽依は、何とか職場の人間関係を上手く乗り切ろうと努力しますが、気の強い羽依は、職場で先輩たちの標的になってしまいます。
大学院生の三女の凛は、感受性が豊かで、家族や京都を愛してはいるものの、京都の生活に息苦しさを感じていて、大学院を卒業した後は、京都から出て独立したいと思っています。
三姉妹の母は、父の定年を機に「私も主婦として定年を迎えます」と切り出し、今後は自分がしたくなった時に自分の趣味の料理だけ作り、二度と家族の食事は作らないことを宣言します。日ごろから四人の女性に圧倒されながら暮らしている父は、自分は迷惑をかけないからと母の宣言を受け入れます。
そうした日常生活の中で「いけず」という言葉や語尾に「知らんけど」をつける言い回しなど、京都独特の言葉遣いが出てきます。京都の人の言葉と本音は違うとよく言われますが、京都の人の心理やプライド、京都独特の閉塞感というものがそうした言葉遣いの描写から感じ取ることが出来ました。
また物語には、四条や鴨川などの観光スポットや、祇園祭など春夏秋冬の京都ならではの行事も三姉妹の日常に絡めて数多く描写されていて、京都の歴史や風土、文化に触れながら、興味深く読み進めました。
三姉妹の両親は京都で生まれ育ち、京都の歴史の中で生きてきました。父親の言った「長年住んでいる京都独特の力を感じることはあるな。出張で別の場所からここへ帰ってくると、妙に清々しい気分になる。京都の風に身体を洗われる感覚があるな。人の力以上のもんを感じるわ」という言葉に京都の歴史を感じ、三女の凛はそうした歴史の重みに息苦しさを感じていたのではないかと思いました。
両親は、凛が大学院を卒業後京都から出て独立することに反対しますが、日常の描写から、決して娘を束縛するのではなく、娘の幸せを願った思いからの反対だということが感じられました。
三姉妹は、性格も生き方も違いますが、時には煩わしさを感じながらも家族に対してそれぞれ思いやりを持っていて、改めて家族って良いなと優しい気持ちになりました。
三姉妹は両親に見守られ、恋愛や仕事、人間関係に悩みながらそれぞれ自分の生きる道を見つけて行きます。三姉妹の日常の生活を通して、家族や仕事、恋愛などが丁寧に描かれていて、その都度なるほどと思いながら読みました。
柔らかい文章の中、観光で訪れるだけではわからない京都の持つ独特の力や表面だけではわからない裏側が窺える物語でした。そして、そういう想いを持って、また京都を訪れてみたいと思いました。
読み終えた後、ふと、自分の生まれ育った地や家族のことを考えていました。故郷や家族のことを再認識する一冊でした。

今日が幸せな一日でありますように。