【小説】千早 茜「ひきなみ」【感想・あらすじ】

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雑記
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ご挨拶

こんにちは、こんばんは、ちまです。
GW皆さんはどのように過ごしましたか?私は母と2人で野球観戦に行ったり浅草に行ったりしました。
今日お話しするのは、千早茜さんの「ひきなみ」です。

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あらすじ

小学六年生の桑田 葉は家庭の事情で、東京から祖父母の住む瀬戸内海にある香口島で暮らすことになります。島での閉塞感に馴染めない葉は、隣島に祖父と暮らす桐生 真以と親しくなります。真以もまた、家族への偏見のため島民から孤立していました。けれども、二人の絆は、真以が脱獄犯と突然失踪したことで、途切れてしまいます。
それから20年が経ち、葉と真以は再会します。女性であることに苦しめられた二人が、強く生きていくために辿り着いた先は・・・。

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ひとり言

千早茜さんの「ひきなみ」を読みました。
この物語は、第一部「海」と第二部「陸」の二部構成になっています。
第一部では、東京から両親の元を離れ、祖父母の住む瀬戸内海の島・香口島へ来た桑田 葉と隣の亀島に住む桐生 真以との出会いと別れが描かれ、第二部では、上司からの執拗なハラスメントに苦しむ葉が、20年ぶりに真以と再会してからが描かれています。物語は、葉の視点で進められていきます。
小学六年生の葉は、母が父の鬱病を介護するため、祖父母の住む瀬戸内海の島・香口島で暮らすことになります。そして、島へ向かう高速船の中で、隣の亀島で祖父と二人で暮らす真以 と出会います。
父親の病気の介護優先で祖父母の元に預けられ、島でも島独特の閉塞感のため孤立する葉と、生い立ちのせいで島の住民から偏見を持たれ孤立している真以は、次第に心を通わせるようになって行きます。
島での風習に違和感を感じ、男尊女卑が当たり前のようにまかり通っている島で、孤立して閉塞感を感じている二人は、親密になっていきます。島でのこうした生活に、真以は自分の信念を貫き立ち向かい、そうした真以に葉は惹かれていきます。そして葉にとって真以は、かけがえのない存在になっていきます。
そうした中、島に脱獄犯の男性が潜伏します。偶然男性を見つけた二人は放っておけず、食べ物や衣服を届けたり、隠れる場所を教えたりします。けれどもある日、真以は葉に何の連絡もなく、男性と失踪してしまいます。私は、真以が島で問題を起こすたびに、淡々とその後始末をする真以の祖父の平蔵さんに、人間としての大きな魅力を感じました。
真以に裏切られたと絶望した葉は、島での思い出のある物を全て捨て、東京へ戻ります。
第一部では、男っぽい振る舞いをする真以の行動に何か原因があるのかと疑問を感じていましたが、第二部でその行動の原因が明らかになっていきます。
葉は大学を卒業後、大手企業に就職しましたが、上司から執拗なハラスメントを受け、体調も崩しがちになっていました。女性だというだけで、理不尽な嫌がらせをする最低な上司に怒りを覚えました。子供の頃から、真以の物事をはっきりとさせる行動的な性格と違い、今自分が置かれている立場を波風なく無難に過ごそうとする消極的な性格が、上司に言いたい放題させているのです。島での女性蔑視は、ここでもまかり通っていました。
そうした日々を過ごしていた時、葉は仕事をきっかけに、偶然真以の行方を掴むことができます。二人は何度か再会するうち、お互いのことを語り合います。葉が会社でハラスメントを受けていることを話した時、真以は言います。「私は何もしてあげられない。私は不器用だから行動するしかないと思い、かえって迷惑かけてしまう。だから、葉は捜せなかった」と。そして真以は、祖母が従軍慰安婦だったことや母親がダンサーをしていることで、島の人の偏見の中で育ったことを話します。真以の祖父と祖母も戦争によって人生を大きく狂わされた人でした。真以が子どもの頃から女性として見られることを嫌い、男っぽく振る舞ったり、大きめの服を着て体を隠そうとしたりして、その結果島を出て行った原因がわかり    ました。戦争の傷跡は、孫の真以にまで及んでいました。真以は、陶芸をするうちに徐々に自分の中に女性であることを受け入れることができるようになってきたと言います。話の中で、平蔵さんが施設で亡くなったことを知り、大切な人を失ったような淋しい気持ちになりました。最期まで真以のことを心配して亡くなったのではないかと思います。
起き上がることが出来なくなるほどの上司からのハラスメントを受けていた葉でしたが、上司から真以の過去や家族のことを記事にするよう言われた時、真以を守るため、初めて自分の意見をはっきりと言い、立ち向かいます。今まで傍観者だった同僚も後押ししてくれました。これからも、嫌がらせは続くかもしれませんが、真以と再会出来た葉は、今までの自分の殻を破り、乗り越えていけると思いました。
二人は、再び島を訪れます。島へ行く途中、平蔵さんの遺言である散骨をします。心残りだった真以に島の海に散骨してもらって、平蔵さんの心情を思い、私も安らかな気持ちになりました。
二人の乗った船が通った後に立つ白波である「ひきなみ」は、これから二人が女性差別や偏見に負けず強く生きていく一本の道となって、二人を導いているのだと思いました。
女性蔑視や性差別を通して、少しずつでも世の中のいわれのない差別がなくなるよう、現代社会に警鐘を鳴らしていると感じた物語でした。

今日が幸せな一日でありますように。

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