【小説】村山 由佳「星々の舟」【感想・あらすじ】

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雑記
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ご挨拶

こんにちは、こんばんは、ちまです。
暖かくなって一気に桜が咲きましたね。私の近所は桜が満開なので桜を見ながら散歩するのが楽しいです。
今日お話しするのは、村山由佳さんの「星々の舟」です。

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あらすじ

禁断の愛に傷つく次男と長女、相手のいる男性しか愛せない次女、自分の居場所を探し続ける長男、過去の虐めから逃れることの出来ない長男の娘、そして、戦争の深い傷痕を抱えながら生きている父。平凡な家庭像を保ちながらも、家族のそれぞれが心の傷を抱えて生きています。重いテーマを取り上げ、愛と家族の行方を問う感動の物語です。
第129回直木賞受賞作です。

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ひとり言

村山由佳さんの「星々の舟」を読みました。
この物語は、六章からなる連作短編集です。水島重之には、長男・貢、次男・暁、長女・沙恵、次女・美希の、四人の異母兄妹の子供がいます。この物語は、この四人の子供と、貢の娘で孫の聡美、そして、重之のそれぞれの視点で、過去から現在までが語られています。重之の後妻の志津子の視点での語りはありませんが、読後、志津子の思いが伝わってきました。
暁の一つ年下の沙恵は、志津子の連れ子でした。歳の近い二人は、幼い時から仲良しで、お互い惹かれ合うものがありました。その後、沙恵が高校二年の時、暴行された事件をきっかけに結ばれ、愛し合うようになります。まもなく二人の関係に気付いた両親は、沙恵は重之と志津子の間に生まれた子どもであることを二人に告げます。もう少し早く真実を二人に告げていたら、二人の関係は兄と妹のままでいられたのでしょうか。その後二人は、自分の気持ちを封印し、別々の生活を歩み始めます。それから十五年経った今、暁は妻から「あなたは最初から、私の後ろに誰か別のひとを見ていた」と離婚届を送られ、沙恵は、近所に住む暁の同級生の清太郎と結婚を控えています。
二人は、志津子の死をきっかけに十五年ぶりに再会します。そして、十五年間封印していたはずの二人の思いは、再び呼び覚まされます。暁への思いを断ち切ることの出来ない沙恵は、清太郎との婚約を破棄します。人の心は、そう簡単に割り切れるものではないのだと二人を見ていて切なくなりました。
美希は、四人兄妹の中で自分だけが今の両親の子どもだと信じ、家庭の中で一家を纏めるべく、明るく振る舞っていました。けれども中学二年の時、沙恵の出生の秘密や暁と沙恵の関係を知り、その後、相手のいる男性ばかりと付き合うようになります。多感な頃に家族の真実を知り、美希も心に深い傷を負い、今も引きずっているのだと思いました。
長男の貢が大学生の時、幼い暁を残して妻を亡くした重之が再婚しました。貢は、頑固な重之とは折り合いが悪く、父親とは距離を置いています。妻子とは、大きな波風立つこともなく暮らしていますが、不倫をしたり、現実から目を背けるため畑仕事に没頭したりと、自分の居場所を探し求めています。下の兄妹とも歳が離れていて、父親の再婚後の貢の孤独を感じました。
高校三年生の聡美は、小・中学生の時、陰湿な虐めにあっていました。中学三年の時、虐めをしていた相手が引っ越しをして虐めはなくなりますが、その相手に再び出くわしてしまいます。その相手のあまりの怖さに、何かと支えになってくれた親友を差し出してしまい、心に深い傷を負っています。被害者に恐怖心を植え付ける、なくならない虐めというものに、大きな苛立ちを覚えました。
最後の重之の戦時中に体験したことの語りは、あまりにも重く、目を背けたくなりました。けれども、私たちはそうした事実があったことをしっかりと受け継ぎ、次世代に引き継がなければいけないと思いました。聡美の同級生の男子生徒が「どうして誰も、戦争は嫌だと言わなかったのですか」という疑問に対し、重之は「本当に、そうだ。君たちは、頼む。ちゃんと声を上げてくれ」としか言えませんでした。悲惨な戦争を体験した重之の、未だに消え去ることのない過去の傷跡の深さを、改めて感じました。戦争のもたらす悲劇はあまりにも残酷です。
一話一話のテーマが重く、それぞれが心の内に苦しみを抱えながら生きています。作品の中でも、そうした苦しみが全て解決して取り除かれるわけではありません。それでも、そうした苦しみを懸命に乗り越えようとしながら生きています。
重之が、先妻と後妻が眠るお墓の前で沙恵を盗み見ながら、「幸福とは言えない幸せも、あるのかもしれない。そして、自分がこうしてまだ残されていることにも意味があるのかもしれないと思う」という描写があります。この思いが、この作品を物語っていると感じました。
生きていくためには、現実を受け入れて、最後は前を向いて、自分で自分なりの幸せを見つけていかなければならないのだと思いました。そして、戦争のもたらす悲劇と共に、家族の血の繋がりについても、改めて考えさせられた作品でした。

今日が幸せな一日でありますように。

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