【小説】朽木 祥「海に向かう足あと」【感想・あらすじ】

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ひとり言
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ご挨拶

こんにちは、こんばんは、ちまです。
先日、夕飯に親子丼を食べました。
卵がフワトロでご飯にしっかり味がしみていてとても美味しかったです!
今日お話しするのは、朽木 祥さんの「海に向かう足あと」です。

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あらすじ

海を愛するキャプテンの村雲をはじめとする6人のクルーメンバーは、三日月島をスタートに開催される外洋ヨットレースに参加することを決めます。
三日月島は、料理も美味しく、サービスも行き届いているホテルと、そのまま海に乗り出せるハーバーがあり、ヨット乗りには、とても魅力のある島です。
世界情勢の若干の不安はあるものの、6人は家族や恋人,仕事、ペットと関わり合いながら、レースに向けて希望を持って取り組みます。平和な日常でした。
しかし,レースの当日、仕事を終え合流するはずのメンバーの一人や家族が到着しません。
電話も繋がりません。
日本をはじめとする世界は、恐ろしい事態に陥っていました。
生き方を問われるディストピア小説です。

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ひとり言

朽木 祥さんの「海に向かう足あと」を読みました。
物語の前半は、レース競技ヨットを共有してしている6人のクルーメンバーの家族や恋人、ペットや仕事との関わりが描かれています。海を愛し、ヨットレースに賭ける男達の物語のようです。
クルーメンバーは、寡黙な照明デザイナーのキャプテンの村雲(むらくも)をはじめ、顎ひげが自慢の老練な水夫という意味のオールドソルトの相原。30代半ばで村雲の大学ヨット部同期の諸橋と三好。三好は妻と娘を愛する公務員で諸橋は政府の研究機関に勤めています。そして、20代半ばのITのベンチャー企業に勤める研人と、ヨットのため仕事を辞めバイトをしているヨットニートの洋平の2人を加えた、ヨットレースに出るために必要な6人です。海を愛し、ヨットに取り憑かれた6人です。
6人は、当初共有していた月天号(がってんごう)が老朽化したため、新たに新艇を手に入れ、「エオリアン・ハープ」号と名付けます。そして、翌年のゴールデンウィークに行われる外洋ヨットレースに参加することを決めます。
レースのスタートとなる三日月島は、ヨットハーバーと部屋数10室余りの小さいホテルがある小さな島です。どの部屋からも海が見渡せることが出来、美味しい食事を楽しむことの出来るホテルと、自然の形をいかしてそのまま海に乗り出せるハーバーは、ヨット乗りにとってはとても魅力のある島です。
テロが続く不安定な世界情勢に小さな気がかりはあるものの、それぞれに家族や恋人、仕事などを見据えながら、レースに向けてプランを立てます。
6人のレースに向けての意気込みや未来へ向けての希望,海の情景、そしてかけがえのない日常が丁寧に描かれています。
前半は、海を愛しヨットに賭ける男達の物語でした。その中で、ペットの犬を通して知り合った,寡黙な村雲と輝喜の恋は素敵です。大人の恋ですが、それぞれのペットを通して、少年と少女のような初々しい恋が描かれていて、これからの二人の前途を応援したくなりました。
けれども、その後、彼らを取り巻く環境が徐々に変化して行く様子が描写され、不安を感じながら読み進めました。
レースの前日、不確かながら、ネットで物騒な情報が流れます。そしてレースの当日、仕事を終え来るはずの諸橋や応援のため来る予定の家族も現れず、電話もメールもありません。そして、こちらからの電話も繋がりません。ヨットにいるクルー達は、何とか繋がった電話による、核ミサイル発射や原発を狙ったテロの情報に絶望の淵に突き落とされます。
絶望の中、ヨットのクルー達の家族や恋人、ペットを思う危機感を持った心情に心が締め付けられました。
現在、世界情勢は不安な状況です。でも取り敢えず今の平和な日々が続くことを信じようと、現実を直視せず、つい目を逸らしてしまいます。
この物語を読んで、私達は未来をもっと見据えて、危機感を持って現実を直視する必要があると痛感しました。そして、そうした事に第一線で対応する政治家を選ぶ一票の重みを、改めて感じました。
人間にとっての本当に大切なことは何かを問いかけられ、絶望の中でも希望を失わないで、最善の努力をすることの大切さを教えられました。
読後、これからの生き方を考える上で、胸の中に残る物語でした。

今日が幸せな一日でありますように。