【小説】宮下 奈都「静かな雨」【感想・あらすじ】

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雑記
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ご挨拶

こんにちは、こんばんは、ちまです。
最近パックの良さに気づき、今では毎日夜にパックをしています。心なしか肌の調子も良いみたいですw
今日お話しするのは、宮下 奈都さんの「静かな雨」です。

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あらすじ

先天性の足の病を持つ行助は、勤めていた会社が倒産した日に、たいやき屋を一人で経営するこよみと出会い親しくなります。けれどもこよみは、交通事故の巻き添えになり、三ヵ月後意識を取り戻しますが、新しい記憶を留めておけなくなっていました。行助は一緒に暮らすことを提案し一緒に暮らし始めますが、彼女は毎朝起きるたびに記憶を失っています。
そうした日々の中、戸惑いながらも、二人の間には絆が結ばれていきます。
文學界新人賞佳作に選ばれた宮下 奈都さんのデビュー作です。

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ひとり言

宮下 奈都さんの「静かな雨」を読みました。
行助は、勤めていた会社が倒産することを告知された日の帰り道、優しい匂いに導かれ、パチンコ屋の裏の駐車場にあるたいやき屋に立ち寄ります。その日は、その冬初めて雪が降ったクリスマスの日で、行助は店主のこよみと出会います。
行助は、帰宅するため、歩きながら食べていたたいやきのあまりのおいしさに、思わず引き返して、こよみに「これ、おいしい」と咄嗟に言うと、こよみは、心底うれしそうに「ありがとうございます」と言います。
行助は生まれつき足に麻痺があり、松葉杖が必要です。行助は、小学校低学年の頃、地球の自転を習ったことから、自分ではどうしようもないことを受け入れようと思います。辛いこともあったと思いますが、ちょっと頑固な父と明るく前向きな母や姉に見守られ、温かい家庭の中で、行助は誠実な青年に育っています。
行助は大学の研究室の助手の仕事も見つかり、その後もたいやき屋に通います。最初の印象から惹かれあった二人は、本当にゆっくりゆっくりと親しくなっていきます。
こよみは芯が強く明るく前向きな性格で、たいやき屋に通う人の中には、たいやきの美味しさはもちろんですが、こよみの人柄に惹かれて通う人も多くいました。
二人は、お互いをかけがえのない大切な人として、幸せな未来が待っているようでした。
行助の家族は、こよみに好感を持ち、行助とこよみが幸せになるよう応援しますが、行助は、自分にとってこよみは「高嶺の花」だと言います。自分のハンディを受け入れ「足が悪いせいで何かを諦めたことなど一度もない」と生きてきた行助でしたが、自分は他の人とは違うという思いが心の片隅にあり、それを拭い去れない行助の気持ちを切なく感じました。
そうしたある四月の朝、こよみは交通事故に巻き込まれ、意識不明の状態で病院に搬送されます。それから十日後、行助は事故のことを知り病院に駆けつけますが、こよみは意識不明のまま眠っています。
行助は、仕事帰り日課のように、意識不明のまま眠り続けるこよみの元を訪れ、こよみに寄り添います。そうした日々の中、行助は、自分がこよみの年齢も出身地も家族のことも、どういう経緯でたいやき屋をやっているのかも、何も知らないことに気づきます。
今、目の前にいるこよみが全てで、他のことは眼中になかったのでしょう。行助らしいと思いました。
こよみは意識不明のまま眠り続け、事故から三か月と三日後、目を覚まします。
けれども、精密検査の結果、高次脳機能障害と診断されます。こよみは、事故以前の記憶はあるものの、その日にあったことを翌日には忘れてしまいます。
行助のことを心配した姉は、「こよみの現状を受け入れ、支える覚悟がなければ、先に進まない方が良い」とアドバイスしますが、行助は、こよみことをずっと守り支える覚悟で、こよみと暮らし始めます。
こよみはたいやき屋を再開します。本当に逞しく強い女性です。
二人の生活は、順風満帆なばかりではありませんでした。こよみの状態を充分理解している行助でしたが、こよみが覚えていないことに憤りを感じ、つい苛立って辛く当たってしまうこともありました。けれどもそうした生活の中で、行助は「毎日生活する中での思いで人はできている」と思えるようになり、二人にとって大切なものに気づき、こよみを支え続けます。
満月の夜、二人はお月見をします。行助は、今がつづいていきますようにと、月に願います。そして行助は、このままずっとこよみと生きていたいと思います。
明け方、音もなく雨が降る中、こよみが「月が明るいのに雨が降っている」と囁き、静かに泣いていました。記憶を失うことになった時も冷静でいたこよみが、静かに降る雨を見て涙を流し、そうしたこよみを行助が静かに見つめているシーンの描写は、二人の思いが感じられ、その美しい場面が目に浮かびました。
「僕の世界にこよみがいて、こよみの世界に僕がいて、そのふたつの世界は少し重なっている。それで、じゅうぶんだ」と行助は思います。
日々の暮らしの中で、二人が育てた思いが少しずつ重なって、二人の世界を築いていくのだと思いました。
この物語は、行助とこよみ以外の登場人物に名前がついていません。そのため、行助とこよみの存在がより一層浮き彫りになったように感じました。
優しく美しいシーンに惹きつけられ、優しい余韻が残る物語でした。

今日が幸せな一日でありますように。

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