【小説】麻加 朋「青い雪」【感想・あらすじ】

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ひとり言
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ご挨拶

こんにちは、こんばんは、ちまです。
1日ってあっという間に過ぎてしまいますよね。
最近はやりたい事が多すぎて1日が過ぎるのがさらに早く感じます。
今日お話しするのは、麻加 朋さんの「青い雪」です。

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あらすじ

雪の降る夜、若い女性がビルから落ち、最期に残した言葉は「青い雪・・・」
毎年夏の数日をともに過ごす3組の家族に悲劇が襲います。1組の夫婦の幼い娘が失踪し、懸命の捜査にもかかわらず行方は不明のまま月日は過ぎて行きます。時を経て、あるきっかけを発端に、封印されていた3組の家族の秘められた過去が明らかになり、真実が解き明かされます。怒涛の展開で謎が解き明かされ、切なくも読み応えのあるミステリー小説です。
第25回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作です。

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ひとり言

麻加 朋さんの「青い雪」を読みました。
ある雪の夜、若い女性がビルから落ちて来て、道路を歩いていた母娘の母親にぶつかり、母親は亡くなります。残された幼い娘が聞いた女性の最期の言葉は「青い雪・・・」。
柊寿々音は柊家の家の前に捨てられていた捨て子で、子供のいない柊家の養女になっています。石田大介は8歳の時、自宅の火事で両親と妹を亡くし、彼も2階から飛び降りて大怪我をしました。運ばれた病院で担当医となった蓮見由利と同じ医者である夫の蓮見幸治は、退院後も大介を気にかけ、大介のいる施設を訪れたり、自宅に招いたりしていました。夫婦には亜矢という娘がいます。的場秀平と希海の父親は、政治家の的場照秀で、的場には蛇田という秘書がいます。物語は、寿々音、大介、秀平と妹の希海、秀平と希海の従兄に当たる医者の蓮見幸治の視点で進められて行きます。
寿々音と希海の出生の秘密と舵田の存在がこの小説の大きな鍵となっています。
3組の家族と、蓮見家と一緒に訪れる大介は、毎年夏の数日間を柊家と的場家の別荘がある土筆町で楽しく過ごしていました。寿々音と希海、大介が中学1年、秀平が中学3年になり、毎年恒例のように楽しく過ごしていた夏のある日、5歳の亜矢が行方不明になってしまいます。懸命の捜索にも関わらず亜矢は見つからないまま月日は過ぎ、幸せだった夏の日々は閉ざされてしまいます。
亜矢の行方不明から6年後、これまで秀平が自分の部屋に隠していた怪文書を、寿々音と希海の前で明らかにしたことをきっかけに、亜矢の失踪の謎が解き明かされて行きます。この怪文書は、亜矢がいなくなった日に寿々音の家の門に挟まれていたものでした。
ここからの話は、怒涛の展開で、読み進める毎に新たな事実が判明して、途中で読むことを止めることが出来ませんでした。
3組の家族の隠されていた複雑な事情が明らかになった時、家柄や血筋、親のエゴ、名誉や欲望、母親に愛されず育った子の感情といった泥々としたものが一気に押し寄せてきて、息苦しいほどの不快感を覚えました。
ビルの屋上から落とされた若い女性、木寺乃蒼の最期の思いがエピローグで明かされます。
最後の一行は、この一行のためにこの物語が生まれたのではないかと思うほどの衝撃を受けました。子どもを守りきることの出来なかった乃蒼の無念さを思うと切なく心が痛くなりました。欲望にかられた大人の身勝手な思惑や行為によって、引き裂かれた母と二人の娘。自分の私利私欲のためには、人の命を奪うことに何のためらいも感じない蛇田のような非情な人間が存在することに激しい憤りを覚えました。
次々と明らかになる新たな真相に、途中で気持ちがついていけなくなりましたが、乃蒼の最期の言葉の「青い雪」が意味することが知りたくて一気に読み進めました。
人間の恐ろしさも感じましたが、それ以上に子どもを思う母の無償の愛を感じました。
泥々とした人間関係の中、自分の信念をしっかりと持って前向きに生きている寿々音や大介、秀平の存在にこれから先の希望を見出せたのが救いでした。そして、大人の身勝手さに翻弄され、人生を狂わされた希海にも希望が訪れることを願わずにはいられません。
自分で選ぶことのできない家庭環境が人に与える影響の大きさと共に、周囲の人々との人間関係が人に与える影響も大きいと感じた読み応えのある一冊でした。

今日が幸せな一日でありますように。