【小説】 はらだ みずき「やがて訪れる春のために」【感想・あらすじ】

スポンサーリンク
ひとり言
スポンサーリンク

ご挨拶

こんにちは、こんばんは、ちまです。
最近は天気がいいので洗濯物がカラッと乾いて嬉しいです。ただ気を付けないと部屋に取り込む際に虫も一緒に入れてしまうので、入念にバサバサしてから取り込んでます!
今日お話しするのは、はらだ みずきさんの「やがて訪れる春のために」です。

スポンサーリンク

あらすじ

ある事情で会社を辞めた村上 真芽は、母から祖母のハルが入院したとの連絡を受けます。80歳になるハルは祖父が亡くなった後、一人暮らしをしていました。ハルを見舞い、小学6年まで一緒に暮らしていた家を訪れると、庭は荒れ果て、家の中も酷い有り様でした。ハルに認知症の症状も見受けられました。
真芽は、かつての庭をよみがえらせようと決意します。
人と庭の再生の物語です。

スポンサーリンク

ひとり言

はらだ みずきさんの「やがて訪れる春のために」を読みました。
村上真芽は、大学卒業後、都内の洋菓子メーカーに就職しました。
真芽には、将来カフェを開きたいという夢がありましたが、一緒に夢を追っていたと思っていた親友と結婚も視野に入れていた同期の男性が付き合っていたことを知り、会社を辞め、夢も頓挫してしまいます。
退職後日々を無為に過ごしていたある日、母親から、祖母のハルが大腿骨を骨折して入院したとの連絡が入ります。ハルに会ったのは、10年近く前、祖父が亡くなった時が最後でした。真芽の家族は、千葉の佐倉市で祖父母と同居していましたが、祖父母と両親のいざこざから、真芽が小学校を卒業した直後幕張に引っ越しをして、祖父が亡くなった後、ハルは一人で暮らしていました。
25歳になった真芽は、80歳になるハルの見舞いのため、13年ぶりに幼少期を過ごした家を訪れます。ハルを見舞う前に訪れたハルの住まいは、庭も家の周りも荒れて酷い有り様でした。病院で再会したハルは、真芽のことがわからなかったようでしたが、真芽が「まめ子だよ、ハルばぁ」と呼びかけるとやっとわかったようでした。ハルに骨折した原因を聞くと、不審者に跡をつけられたからだと言い、家の中にも誰かが入った痕跡があると言います。そして真芽に、家の様子を見てきて欲しいと頼み、早く家に帰りたいと言います。
ハルとの会話には、現実と噛み合わないことが幾つかありましたが、後に幻視だと思っていたことの幾つかは現実にあったことがわかります。ハルは、自分が認知症であることを自覚して、処方された薬を飲んでいましたが、現実のことまで認知症のせいだと否定されることに寂しい思いをしたのではないかと思いました。
ハルの隣家には、小川 ジローという老人が住んでいました。最初真芽は、老人を勝手にジジローと名付けてあまり良い印象を持っていませんでしたが、ジローさんは、その後真芽の夢のために大きな役割を果たしてくれます。
真芽は庭木に関する本を借りようと行った図書館で、そこで働いている小学校で同級生だった茄子(なす)と偶然出会います。当時から世話好きでちょっとおせっかいな「ナスビー」と呼ばれていた彼女は、その後も真芽のためにいろいろ力になってくれます。
ハルの家は、真芽と弟の樹里の部屋が引っ越しをした時のまま残されていました。ハルの孫を思う気持ちが窺い知れます。
庭の再生に必要なものを買おうとホームセンターの園芸コーナーに行った時、真芽はそこで働く同級生の遠藤君と再会します。彼は花屋の息子でしたが、父親が亡くなった後事情があって店を売却してホームセンターで働いていました。植物に詳しい彼もまた、真芽にとって力強い存在になります。
ハルが介護施設に入ったのを機に、両親や叔母がハルの家を売りに出す計画を進めている中、真芽はかつてのハルの庭を蘇らせようと、ジローさんやナスビー、遠藤君の力を借りながら、奮闘します。幼い真芽に花の名前を教え、料理を教えてくれたハルに喜んでもらいたいという思いと共に、ハルに一人暮らしをさせてしまった後悔も含めての思い、それ以上に子供の頃育った庭への愛着があったのではないかと思いました。
ハルは、美味しい実をつける果樹を沢山育てていました。幼い頃真芽が「ハルばあみたいに、美味しいおやつを作って、みんなに食べてもらうお店をやりたい」と言ったのを聞いて、真芽の将来の夢のために少しでも手助けしてやりたいというハルの想いの果樹でした。
庭の再生と共に、「やがて訪れる真芽のために」ハルが丹精込めて育てた果実を使い、真芽は夢であったカフェをオープンします。そして、カフェを訪れたハルに再生したハルの庭を見てもらうことも出来ました。
最初はハルの庭を蘇らせようと奮闘する真芽の手助けをしようと庭の再生に携わったジローさんやナスビー、遠藤君、弟の樹里も、結果、自分の生きがいを見いだすことに繋がって行ったのではないかと思いました。庭を訪れ、ハルのおやつを食べていた母子家庭の小学3年のあずきもまた、ハルと ハルの庭に癒されていたのではないでしょうか。
荒れ果てていたハルの庭は蘇り、再生に携わった人々に夢と生きがいを与えました。
ハルの認知症は進みますが、真芽は「やがて訪れるハルのために」自分の夢を追い続けます。
今自分にとって為すべきことは何かを考えるきっかけを与えてくれた、心温まる物語でした。

今日が幸せな一日でありますように。