【小説】窪 美澄「ははのれんあい」【感想・あらすじ】

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ひとり言
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ご挨拶

こんにちは、こんばんは、ちまです。
最近は散歩をサボりがちになってます。また気合を入れ直して頑張ろうと思います!
今日お話しするのは、窪 美澄さんの「ははのれんあい」です。

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あらすじ

由紀子は、優しい夫と義理の両親に囲まれ幸せな中、長男の智晴を出産します。
けれどもその後、双子の次男・三男が産まれた頃から、次第に夫婦の間にひずみが生じていき、離婚することになります。
智晴は仕事に多忙な母や双子の弟たちを支え懸命に生き、成長して行きます。家族の形を問う感動の家族小説です。

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ひとり言

窪 美澄さんの「ははのれんあい」を読みました。
由紀子は、実家が婦人服の縫製業を営む智久と結婚して、長男の智晴を出産します。第一部は、子供が産まれて幸せな日々から夫婦が離婚を考えるまでの過程が由紀子の視点で、第二部は、両親の離婚後の母や弟、父、そして幼馴染みの友人、初恋の人との関係を高校生になった智晴の視点で描かれています。
由紀子は、夫の実家の家業を手伝いながら智晴を出産します。けれども仕事が激減したため、智晴を保育園に預け、智久はタクシーの運転手として、由紀子は駅の売店で働くことになります。
お互いに慣れない仕事と子育てに追われる日々を過ごす中、由紀子は妊娠し、やっと慣れ興味も出てきた仕事を辞めることになり、双子の男の子を出産します。寛人と結人と名付けられた双子と智晴の育児と復帰した仕事に追われる中、智久の浮気が発覚します。居酒屋で働いている、タイ人の女性です。お互いに自分の居場所を求めて、気持ちがすれ違って行きます。夫婦が仕事と育児のため、精神的にも肉体的にも疲れきり、相手を思いやるゆとりが無くなっていく過程の描写は、読んでいても本当に辛くなりました。私は、三児の父としての智久の弱さに対して、由紀子の強さを感じました。母として子供のことは何としても守りたいという、子供に対する責任感の差でしょうか。
そうした中、由紀子と智久の間には離婚という二文字が重くのしかかり、智晴は小学三年生になっていました。
第二部に入って、智久の浮気相手の女性が妊娠した事もあり、由紀子と智久は離婚します。智久は再婚し新しい家庭を持ち、智晴は高校一年生になっています。智晴は、職場復帰して正社員になった多忙な母に代わり、不満を持つこともなく当たり前のように、家事や弟たちの面倒を見ています。親に反抗しそうな多感な時期に、本当に健気で、応援せずにはいられません。長男であるという責任感からだけではなく、智晴本来の優しい性格が窺い知れました。
智晴は、高校で父親の再婚相手の連れ子のシリアットと同じクラスになり複雑な思いを持ち、双子の弟たちもまた両親が離婚したことにより、父親を追い求める気持ちと新しい家庭を持った父親との関係に戸惑っています。
智晴は、幼馴染である大地が好意を寄せる、保育園からの同級生の彩菜を好きになり、大地との間に亀裂が生じます。それでも智晴は、自分の気持ちに正直に生きようと決心します。この選択は智晴にとって、大きな成長をもたらしたのだと思いました。ずっとわだかまりを持ち続けていた父親のことも少しずつ理解できるようになり、「ははのれんあい」も後押しできるようになります。時間を経て、自分が経験したからこそ理解できることがあるのだと思いました。
彩菜や弟たちと父親の家を訪れた時、智晴は「懐かしい父のにおいを感じながら、肩車、僕もしてもらいたかったな」と思います。智晴はわだかまりのあった父親との壁が少しずつ取り払われて、今まで封印していた自分の本当の気持ちを表に出すことができるようになったのだと思いました。智晴が自分の子供を肩車している姿が目に浮かぶようです。
大地は母親の再婚のため、東京へ引っ越しをすることになります。引っ越しの当日の早朝、智晴と大地は蓮池で落ち合い、保育園時代を懐かしむように、ちりんと鳴って次々に開花し、池に一杯になった満開の蓮の花を見ます。同じ女性を好きになった二人ですが、智晴と大地はずっとこの光景を忘れないで、離れていても二人の友情は続いていくと感じました。
家族の形は、それぞれの家庭の事情でさまざまです。家族は時とともにいろいろな原因で形を変えることもあるけれど、家族がそれぞれの居場所で前向きに生きていくことがそれぞれの幸せに繋がるのではないかと感じた物語でした。

今日が幸せな一日でありますように。