【感想】高嶋 哲夫 「イントゥルーダー」【あらすじ付き】

スポンサーリンク
ひとり言
スポンサーリンク

ご挨拶

こんにちは、こんばんは、ちまです。
先日の雨で桜がすっかり散ってしまいましたね。もう少し花びらが舞うのを見ていたかったです。
今日お話しするのは、高嶋哲夫さんの「イントゥルーダー」です。

スポンサーリンク

あらすじ

25年前に別れた恋人から突然の連絡が。「あなたの息子が重体です」。日本を代表するコンピュータ開発者の「私」に息子がいたなんて。このまま一度も会うことなく死んでしまうのか…。
奇しくも天才プログラマーとして活躍する息子のデータを巡って、「私」は、原発建設がからまったハイテク犯罪の壮絶な渦中に巻き込まれていく。

スポンサーリンク

ひとり言

高嶋哲夫さんの 「イントゥルーダー」を読みました。
「イントゥルーダー」・・・「侵入者」
羽嶋浩司は、コンピュータ業界では知られた存在の東洋電子工業の副社長です。妻子と共に平和な家庭を築いていました。
そんな彼の元に25年前に別れたかつての恋人から突然「あなたの息子の慎司が、交通事故で意識不明の重篤な状態です。」との電話がかかってきます。
子供の存在をそれまで知らされていなかった羽嶋は、戸惑いながらも慎司のもとへ駆けつけるのです。
25年間その存在すら知らなかった息子の存在、しかも意識不明の重体。いきなりそんな現実を突き付けられた羽嶋の戸惑い。それでも、羽嶋は会った事もない息子のもとへ向かいます。「お父さん、助けて。」という慎司の目に見えない切実な訴えを感じたのではないでしょうか。
病院に駆けつけた翌日、羽嶋は刑事から慎司の血液中から覚醒剤が検出されたと知らされます。警察は慎司を覚醒剤使用者及び売人と疑い捜査を始めます。
そうした中、慎司は羽嶋と一言も言葉を交わさないままこの世を去ってしまいます。
一瞬でもいいから意志の疎通が出来る時間があって、出来れば「お父さん。」「慎司。」のひと言でもいいから呼びあうことが叶えられたらと思いました。
慎司の死に衝撃を受けた羽嶋は、息子の汚名を晴らそうと調査に乗り出します。
そして羽嶋は、慎司の事故の裏に隠された原発建設に関係する巨大な陰謀にたどり着くのです。そこには、何が何でも原発建設を実現する為には手段を選ばない政治家や電力会社の姿がありました。そしてそうした陰謀の中で、羽嶋は慎司が「正義感の為に、ウイルスを使ったイントゥルーダー」であったことを知るのです。
この小説は原発の問題点を捉え、その問題は日本の先行きに深刻な状況を及ぼすと、日本の将来に警鐘を鳴らしているのです。
羽嶋の調査の過程は、息子の人生をたどる過程でもありました。そうした中で羽嶋は、父を目指し優秀なコンピュータ技術者となった慎司に対して徐々に愛情を抱き、自分の息子だと認識を持つようになって行きます。
25年間息子の存在を知らなかった父、そして会った事もない父を追い求める息子の生き様、そうした二人の関係に哀しみを感じ心を揺さぶられます。
最終局面で慎司のメッセージが出てきます。
「でも、僕のウィルスは、ダメージを与えることは絶対にない。ただ、存在しているだけ。そういう点においては、僕と同じだ。父さんにとって、僕の存在は無だ。僕はただ自分の意識の中に存在しているだけ。父さんに見つからなくても、発表の日には消えるよ。」
何て切なく哀しいメッセージでしょう。言葉とは裏腹に本当は父を追い求める慎司の思いに胸が締め付けられます。
慎司がこうした事件に巻き込まれていなければ、羽嶋は一生慎司の存在を知らないままだったのでしょうか?
私はそうは思いません。慎司の母親の判断か慎司の判断かはわかりませんが、きっと何かのきっかけで息子の存在を知る時が来たと思います。
慎司は羽嶋にとって、決して「イントゥルーダー」ではありませんでした。心から愛する息子だったのです。

今日が幸せな一日でありますように。