【小説】川上 佐都「街に躍ねる」【感想・あらすじ】

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ひとり言
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ご挨拶

こんにちは、こんばんは、ちまです。
先日、母が私の家に遊びに来てくれました。手料理を振舞ったり外食をしてお酒を飲みながら色々な話をしたり、普段実家では出来ない事をする事が出来ました。
今後もたまに遊びに来てほしいなと思いました。
今日お話しするのは、川上 佐都さんの「街に躍ねる」です。

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あらすじ

小学5年生の晶は高校二年生の兄の達と両親と暮らしています。
晶は、物知りで絵の上手な兄のことを尊敬していますが、達は人とのコミュニケーションが苦手で不登校です。そして集中すると全力で走り出してしまう癖があるため、周囲からは「普通ではない」と思われています。
晶は大好きな兄と周囲が兄を見る目のギャップに戸惑い葛藤します。
晶と達の二人の兄弟を通して、普通とは何かを考え、大切なものを見失わないことの必要性を感じる人と人との関わりの物語です。
第11回ポプラ社小説新人賞特別賞受賞作です。

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ひとり言

川上 佐都さんの「街に躍ねる」を読みました。
晶は、小学5年生の男の子です。両親と高校2年生の兄の達と暮らしています。
晶は友達も多く、学校の行事にも積極的に取り組む明るい性格です。そして、物知りで絵が上手く、いろいろなことを教えてくれる兄の達のことを尊敬しています。
それに対して達は、人とのコミュニュケーションが苦手で不登校です。そして集中すると、全力で走り回ってしまいます。そのため大家さんから苦情が出たり、周囲の人から普通の人ではないと思われています。
達のことが大好きな晶は、兄の良さを周囲の人達が理解してくれないことをもどかしく思います。けれどもその一方で、周囲の人の兄を見る目を意識して、兄に普通の人になって欲しいと思う気持ちも心の片隅にあります。
まだ小学5年生の晶のそうした矛盾した気持ちは、同級生達と上手く付き合っていく上で無理のないことだと思いました。
そうした晶の葛藤が、晶の純真無垢な視点で丁寧に描かれていて、晶と達それぞれの、普通でないことに対して、どうしたら良いのか戸惑う気持ちを痛いほど感じました。
そして、普通の人と異なることが、家族に及ぼす影響や周囲の人がどういう風に捉えるかがリアルに描写されていて、読んでいるうちに常識に囚われて生活をしている自分を感じました。
第一章は、兄弟の視点で、第二章は、兄弟の母、朝子の視点で描かれていて、第二章は、第一章を補う形になっています。
達は、朝子の離婚した前夫の子供で、今の夫の子供ではありません。朝子は秋田で同居していた夫の家族の習わしにどうしても馴染むことが出来ず、そのことを夫に相談しても理解して貰えず、達が二歳の時、離婚届を置いて実家に帰りました。そして離婚後、晶の父親の凌平と再婚して晶が生まれました。
達が高校二年のゴールデンウィーク間近のある日、前夫から突然、先日義父が亡くなったとの速達が届き、達に可能なら来て欲しいとの伝言が書かれていました。達の意志で達と朝子は秋田に行きます。
大家さんから達の足音に対する苦情もあって、朝子と達はしばらく前夫の家で暮らすことになります。
そのことを知った時の晶の悲しみや淋しさ、怒りといった感情が第一章で細やかに描写されていて、晶と達それぞれの辛い心情が察しられました。
第二章では、朝子の達に対する不安や心配が描かれ、親として子供にどういう風に接して、どういう選択をすれば良いのかという朝子の苦しい胸の内を感じ、改めて家族の在り方を考えさせられました。
そうした中、晶の父親と朝子の前夫で達の父親が、子供達を温かく見守っていて癒されました。
読みながら、普通とはどういうことなのか、普通でないことは悪いことなのか、ということを改めて考えました。
普通であることは、社会生活を営むためある程度は必要なことではあるけれど、余りにも常識に囚われてしまうと,大事なことを見落としてしまうような気がしました。
晶と達、二人の兄弟を通して、常識に囚われない広い視野で物事を見る必要性を感じました。
優しく細やかな文章で描かれた、温かな余韻の残る物語です。

今日が幸せな一日になりますように。