【ちまのひとり言】角田光代「対岸の彼女」

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雑記
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ご挨拶

こんにちは、こんばんは、ちまです。
最近ポケモンスナップを買いました。楽しくて毎日プレイしてます。
今日お話しするのは、角田光代さんの「対岸の彼女」です。

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あらすじ

結婚する女、しない女。子供を持つ女、持たない女。それだけのことで、どうして女どうし、わかりあえなくなるんだろう。ベンチャー企業の女社長・葵にスカウトされ、ハウスクリーニングの仕事を始めた専業主婦の小夜子。二人の出会いと友情は、些細なことから亀裂を生じていくが……。

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ひとり言

角田光代さんの「対岸の彼女」を読みました。
人間関係の難しさを改めて考えさせられました。
三十五歳の田村小夜子は専業主婦です。夫・修二と三歳の娘あかりと暮らしています。ママ友や夫、そして義母との関係に少し疲れを感じています。
結婚したり子供を授かったりすると、新たな人間関係が生まれます。こうした関係が必ずしも上手くいくとは限りません。その都度、試行錯誤して生きていく必要が出て来ます。
こうした中で、孤独感を感じていた小夜子は、前向きに生きるために働きに出ようと思います。そして、楢橋葵が経営する、プラチナ・プラネットという会社に就職します。
この会社は旅行会社なのですが、小夜子が採用されたのは、葵が新たに進出しようとしている掃除代行業務でした。
葵は、小夜子と同い年で同じ大学を卒業しています。片や子育てに追われる専業主婦、片や会社を経営する独身のキャリアウーマンです。これが「対岸の彼女」を表しているのかなと思いました。
掃除の仕事はハードで、小夜子は初めは戸惑いますが、次第に仕事にやりがいを感じるようになってきます。そうすると、小夜子の気持ちも前向きなものに変わって行きます。
この物語は、現在の小夜子の物語と高校生だった頃の葵の物語が交互に描かれています。
現在と過去が交互に出てきて不思議な感じがします。けれども読み終えた後、高校時代の葵の物語がこの物語のメッセージにとても重要な役割をしていたのだと思いました。
葵は中学時代にいじめを受けていました。そのため母親の実家がある群馬に引っ越しをします。入学した高校ではいじめられることはなく、野口魚子というちょっと変わった感じの同級生と親友になります。
どのグループにも属さないナナコは、葵にとってはかけがえのない友人になります。どこかのグループに属していないとまたいじめに合うのでないかと不安を抱いている葵にとって、ナナコは新鮮で安心できる存在だったのだと思いました。
高校二年の夏休み、二人は伊豆のペンションでアルバイトをします。アルバイトが終わった後、葵はナナコの家の実情を知り、二人で家出をします。
そして、途中下車をしながら葵が以前暮らしていた横浜を目指します。
「家に帰りたくない。ずっと遠くに行きたい」と思った二人は、葵が以前住んでいた横浜の四階建てマンションの屋上から、手をつないで飛び降ります。
駐輪場のトタン屋根の上に落ちた二人は、打撲だけですみました。入院している時、葵はナナコがどうなったのかを知りたくて尋ねますが、誰も教えてくれません。
葵の両親が一か月も前に、捜索願いを出していたこともあり、このことは事実とは異なることも含めて新聞や雑誌で報道されます。
この時小夜子は、大学受験をきっかけに友達から無視されるようになっていて、自分と同い年の二人のこの事件のことに興味を持っていました。このことは、後々葵と小夜子の関係に影響を及ぼします。
葵は退院後、家族の目を盗んでナナコの住んでいた団地に行きますが、ナナコの住んでいた一室は空き家になっていました。
その後、葵の父の計らいで、葵とナナコは再会することが出来ます。父親ならではの寛容な深い愛を感じました。ナナコは「家庭の事情で転校するけど、住所が決まったら必ず連絡する」と約束して、二人は別れました。でもその後連絡はありませんでした。
小夜子は家庭では、義母や夫の振る舞いに不満を持ったり、子育てで少しいらいらしています。それでも仕事では、アイデアを出したりして頑張って働いています。
そうした時、小夜子は葵から突然、今からあかりと三人で温泉に行こうと誘われます。小夜子は一瞬躊躇したものの、日々の夫への不満もあり承諾します。楽しい時間を過ごしたものの、葵の一泊しようという提案に不安を感じ、葵と喧嘩別れするような形であかりと二人で帰ります。
そうした中、その後も掃除の仕事を続ける小夜子に、葵から、掃除の仕事から手を引くので旅行関係の仕事を手伝って欲しいとの打診があります。社員やアルバイトの三人が突然同時に辞表を出したためです。その時葵が「掃除の仕事も人に任せておいた方が安心」と言った言葉に小夜子は傷つきます。そして、仕返しのつもりで、「自殺未遂のあと。結局、どうなったの」と葵に訊きます。
葵は、何のためらいもなく自分とナナコの家出やその後のことを小夜子に話します。
高校生の頃の葵と現在の葵とでは、ものごとに対する価値観は大きく変わっていますが、淋しがりやで人との付き合いに臆病な本質的な部分は変わっていないのではないかと思いました。
話を聞いた小夜子は会社を辞める決意をして、元の生活に戻ります。働いていた時に出来なかった家事に精を出す一方、夫や義母との関係はまた以前のように逆戻りです。
そうした生活の中、小夜子は、「私たちはなんのために歳を重ねるんだろう」と考えるようになります。
そして、また葵と向かい合うことを決断し、葵の下北沢の住まいを訪れ、「もう一度一緒に仕事をさせて下さい」と頼むのです。
この小夜子の選択が、今後上手くいくかどうかはわかりません。二人で力を合わせて会社を軌道に乗せ大きくしていくのか 、あるいはかつての葵とナナコのようになってしまうのか。
でも小夜子は、決断して自分で選んだ場所に自分の意志で行ったのです。
ここで、葵が父親の計らいでナナコに会った後、心の中で叫ぶように父親に言った言葉が思い出されました。「大人になれば自分で何かを選べるようなるの?」
小夜子の取った行動は、この高校生の葵の問いに対する答えなのだと思いました。
年齢を重ねるごとに、人との関わり方に悩むことが増えてきます。ずっとこのままの関係が続けば良いと思えるような人間関係ばかりではありません。煩わしさに、もう断ち切ってしまいたいと思うような人間関係もあります。でも、自分の決断で断ち切ることの出来る関係ばかりではありません。
社会生活を営む限り、人間関係は避けては通れません。
悩みながら、試行錯誤しながら、その都度最善と思われる選択を模索して生きていく必要があるのだと改めて感じました。人との関わり合いに押し潰されないようにするために。

今日が幸せな一日でありますように。

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