【小説】高橋 陽子「黄金の庭」【感想・あらすじ】

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雑記
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ご挨拶

こんにちは、こんばんは、ちまです。
最近、前屈をしたら地面に手が届かなくなっていて焦りました。柔軟やストレッチをしっかりやろうと思います。
今日お話しするのは、高橋陽子さんの「黄金の庭」です。

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あらすじ

お寺の閻魔様が動きまわり、公園の池の蓮の花からはお釈迦様が現れるなど、次々と奇妙なことが起こる町に引っ越して来ました。その後も、質屋で手に入れたオパールの指輪が喋りだしたり・・・けれども、町の人々は日常のこととして驚きもしません。不思議な町へ引越してきた夫婦と、町で暮らす人々の日常を描いた大人のファンタジーです。第36回すばる文学賞受賞作です。

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ひとり言

高橋陽子さんの「黄金の庭」を読みました。
青菜は、仕事を辞め、夫の那津男と、黄金町に引っ越して来ました。那津男の兄の親友が海外赴任のため、三年間格安で貸してくれたためでした。築五十年の古い一軒家です。
青菜が今抱えている悩みは、不妊と職探しで、家庭教師をしている那津男はぼろぼろになった熊のぬいぐるみを溺愛しています。
町の人はとても礼儀正しく、挨拶もしっかりします。仄々とした話の流れです。ところが、青菜と那津男が初詣でに行った黄金寺から、物語は一変します。
常軌を逸するいたずらをしたアーちゃんと呼ばれている子どもを、本物の閻魔様が飛び出して来て投げ飛ばしてしまいます。周りの人は何事もなかったように振る舞っています。その夜、那津男の実家に新年の挨拶に行った帰りの夜空では、三日月の明かりで羽衣をまとった天女が3人ほど踊っています。その後も、屋根の上のシャチホコが蛇を食べていたり、広場の木の下に座る女の子が、両手から虹を出していたりと、日常ではあり得ないことが次々出て来ます。けれども青菜も那津男も動じない様子なので、えっ、これって普通のことなの、と思いながら読み進めました。
青菜は、広場の路上でアクセサリーを売っている千寿寛治、通称千ちゃんから、一緒に仕事をしないかと誘われます。名刺には、ライフコーディネーターとなっていますが、何でも屋のような仕事のようです。青菜は最初、個人情報を取り扱った違法な営業を手伝わせられましたが、千ちゃんの事務所で働いているダイヤの紹介で児童クラブで働くことになります。浮気者の千ちゃんとダイヤの関係も何だか微妙です。
黄金町には、代々、少年のアーちゃんが登場し、十三歳になるとアーちゃんでは無くなるらしいです。アーちゃんはいたずら三昧しても、町の人からは阿子童子の生まれ変わりだと信じられていて、何となく許されています。千ちゃんも嘗てのアーちゃんでした。アーちゃんの存在がこの町の不思議を象徴しているように感じました。
青菜はふらっと立ち寄った質屋で、おしゃべりオパールと出会います。金の台に直径一センチほどの楕円のオパールがついた指輪で、オジさんによると「何億年も地中にいてしゃべりたくてたまらなくなってますから、あることないことあなたにしゃべります」という指輪です。また奇妙な世界が始まりますが、指にはめると気ままに喋り出し、持ち主にアドバイスまでする、わがままで上から目線でちょっと偉そうなおしゃべりオパールが、なんだか可愛く思えて来ました。
公園の池では蓮の花がひらくたび、小さなお釈迦様が毎日姿を現します。町の人々は日常のこととして受け入れ、青菜と那津男も何となくこの町に馴染んでいます。不思議な光景と 感じる方がおかしいのではないかと錯覚しそうです。
音楽活動をしている千ちゃんのライブからの帰り道、那津男は、キスをしたらしい青菜と千ちゃんの関係に不安を覚えますが、おしゃべりオパールの「妻のいうことを信じておればよい」という言葉に励まされ、青菜の自分を思う気持ちを信じようと思います。
ダイヤは、浮気者の千ちゃんと別れる決心をして町を出ます。けれども、妊娠したことがわかり、一人で育てる覚悟で町に帰って来ます。子供ができた事を知った千ちゃんは、ダイヤと結婚するため、これまでの生活を改めようと決心します。ダイヤは結婚する気はないようですが、千ちゃんがダイヤを大切にして、ダイヤと生まれてくる子どもが幸せに暮らしていけるといいなと思いました。
青菜が、アーちゃんに荒らされた庭に、苺の苗を植えようとスコップで掘り返していると、ブリキの箱が出てきます。古い封筒の中に、たどたどしい文字で『このてがみをよんだら、しあわせになります』と書かれた手紙が入っていました。手紙を読んだ青菜は、胸が温かくなります。そして、宝くじを買いに行く途中で、シャチホコが大きくあくびをしている姿を見かけます。物語はここで終わります。
悩みがない訳ではないけれど、ひょうひょうと生きている青菜の語りのせいか、日常の現実と不思議とが混在している世界を違和感なく受け入れていました。三年間の約束で家を借りた青菜と那津男ですが、三年後もきっと黄金町に住み続けていると思いました。
不思議な町に引っ越しをして来た夫婦とその町に暮らす人々の日常を描いた新感覚のファンタジーでした。おしゃべりオパールの声を聞いてみたいと思いました。

今日が幸せな一日でありますように。

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