【感想】あさの あつこ「末ながく、お幸せに」【あらすじ付き】

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ひとり言
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ご挨拶

こんにちは、こんばんは、ちまです。
まだまだ秋とは言えない暑さが続いていますね。早く涼しくなってほしいです。
今日お話しするのは、あさのあつこさんの「末ながく、お幸せに」です。

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あらすじ

謹啓
光がきらめきを増し、本格的な夏の到来を感じるころとなりました。
この眩しい季節に、わたしたちは結婚いたします。
つきましては、わたしたちの結婚の宴にぜひとも
ご臨席をお願いしたく、 招待状をお送りさせていただきます。
わたしたちが、わたしたちの新たな旅立ちを
祝っていただきたいと思う方々だけを
ご招待した、ささやかな宴です。
ご多用中とは存じますが、どうか、よろしくお願い申し上げます。 謹白
日時 七月一日 午前十一時より
場所 やまべリラホテル 二階 インディゴ
九江 泰樹 瀬戸田 萌恵
「私たち、本物の夫婦になれるかな?」

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ひとり言

あさのあつこさんの「末ながく、お幸せに」を読みました。
この物語は、主人公である瀬戸田萌恵と九江泰樹の結婚式の披露宴でのスピーチから始まります。新婦の友人、新婦の元上司、ウェディング・プランナー、新婦の従兄、新郎の友人、新婦の伯母、新郎の父、新婦の母の8人のお祝いスピーチや新郎新婦への想いで、物語は描かれています。
8人は、それぞれ心の中に深い傷を負っています。そうした心の傷や、萌恵と泰樹への結婚への想いを語ることによって、新郎新婦の人物像が浮かび上がってきます。そして8人は、スピーチすることによって自分自身と向き合うことが出来、心の中のわだかまりを払拭し、前向きに生きることが出来るようになります。
萌恵の従兄の佐々木慶介は、結婚式の招待状の返事のハガキを投函した時、結婚について「どちらかがどちらかに依存していても、束縛していても、駄目なのだ。相手に幸せにしてもらうのではなく、相手を幸せにするのではなく、自分の幸せを自分で作り上げる。それができる者同士が結びあうこと。本物の結婚とはそういうものなのだろう」と思います。結婚 に失敗して、辛く苦しい思いをした慶介の経験があってからこそ出る理想の結婚観だと思いました。
萌恵の伯母の瑛子は、高校の同級生である瀬戸田真人と結婚し、萌恵が産まれます。しかし瑛子は、職人の男性と恋に落ち、萌恵が3歳の時に萌恵を置いて、家を出て行きます。そしてその後、真人は瑛子の妹の良美と結婚し、萌恵にとって叔母だった良美が、萌恵の育ての母となります。
萌恵は良美が実の母ではないことや、伯母だと思っていた瑛子が実母だったことを知り、「何か大切なものを捨てるような結婚はしません。誰かを犠牲にしてまで貫くような愛って嫌です。捨てるのではなく、育てていけると思える結婚をする」という結婚観を持ち、泰樹との結婚に臨んでいます。
萌恵は結婚式に出席してもらうため、瑛子に電話した時に言います、「伯母として結婚式に出てください。いいかげん、けりをつけてもらいたいんです。伯母さんのこと嫌いです。卑怯だし、自分勝手だし。自分の生き方を後悔してるんですか」と。それに対して瑛子は「後悔なんかしていないわ」と答えます。
そして披露宴でキャンドルに火を点す時、萌恵は瑛子に「伯母さん、あたし、生まれてきてよかった」と、囁やくのです。萌恵の瑛子に対する、精一杯の想いから出た言葉だと思いました。そして、実の母親とのけりをつけることが出来たのだと思いました。
萌恵の母親の良美は、仕事も夢も犠牲にして、萌恵のために生きてきました。けれども、萌恵からは、「お母さんって、重いよ。お母さんといると息が詰まる」と言われてしまいます。3歳から一生懸命に萌恵を育ててきた良美にとっては、本当に辛い言葉だったと思いますが、実母に捨てられた過去のある萌恵のどうしようもない苛立ちや苦悩も理解できます。でも、実の親であってもこうした互いの感情の行き違いはよくあることではないかと思いました。
そうしたそれぞれの思いの中で、萌恵の実の母と育ての母が出席して開かれた結婚式でした。
物語の最後の「お母さん、お母さん。いままでありがとう。萌恵より」と綴られた萌恵から母親の良美への手紙で、萌恵の良美への本当の想いが伝わります。
私は、派手な演出や美辞麗句を並びたてたスピーチ、また当事者に会ったこともない人の出席するような結婚式の披露宴に疑問を持っていました。近年では、冠婚葬祭の在り方も段々見直されてくるようになってきました。この物語を読み終えて、画一的ではなくその家々に合ったセレモニーの重要性を感じました。そして、本当に出席して欲しい人が出席し、当事者も出席者もそのことをきっかけに前向きになることができるセレモニーこそ、意味があるではないかと思いました。
多様な親子の関係とともに、理想的な冠婚葬祭の在り方についても考えさせられる一冊でした。

今日が幸せな一日でありますように。