【感想】白川 道「冬の童話」【あらすじ付き】

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ひとり言
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ご挨拶

こんにちは、こんばんは、ちまです。
寒くなってきたので皆さん体調を崩さないように気を付けましょう!
今日お話しするのは、白川 道さんの「冬の童話」です。

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あらすじ

暗い過去と孤独を糧に出版界でのし上がった男・稲垣聖人。
マスコミの寵児として生きる華やかな日々の中、理想と現実の挟間で疲弊していた。
大いなる才能と美しい心を持て余し虚無的に生きる女・名高そら。
ひたすら懸命に働かざるをえない慎ましやかな日々の中、夢などとうに捨てていた。
出逢うはずのなかった二人が運命的に出逢った冬の夜、あまりにも過酷な運命の歯車がまわりだす――。

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ひとり言

白川 道さんの「冬の童話」を読みました。
雪の降る寒い夜、寒さと孤独で何かに導かれるように出会った、名高そらと稲垣聖人の哀しくも美しい物語です。
21歳のそらは、化粧品会社の派遣社員として働いています。そらの実の父はそらが幼い頃に亡くなり、その後母親が再婚した義父から、子供の頃虐待を受けていました。母親がクリスチャンだったため、そらは子供の頃、教会で賛美歌を歌っていました。10歳になる弟の光は、脳腫瘍で入院して危険な状態で、そらは高額の入院費用に追われています。
聖人は、若くして出版社を設立して成功し、世間から一目置かれる存在です。聖人は、48年前の2月14日、養護施設の玄関先に置かれた捨て子でした。聖人はその養護施設と幼稚園を営む教会の牧師夫妻に育てられます。仕事は成功したものの、辛い過去のため、プライベートでは孤独な日々を過ごしています。
そんな二人が風俗を通して、ある冬の寒い夜、運命に導かれるかのように出逢います。二人にとって、それぞれ始めての体験でした。そうした自分達をそらは次のように言っています。『この広い東京の、ある雪の降る寒い夜に、寂しがり屋の一頭のキャメルと、どうしようもなくなってしまった小さなメスのノラ猫が、寒さと孤独に吸い寄せられて会ったとサ』 二人の現状を捉えた、本当に上手な表現だと思いました。
その後二人は、様々な試練を乗り越えながら、童話のような純愛を続けます。そらは、聖人の支援によって、歌手の道を歩き出します。孤独だった二人がやっと巡り逢えて、お互いを思いやる純粋さに、ずっとこの幸せが続いて欲しいと願いながら読んでいました。
けれども、幸せは永くは続かず、二人を過酷な運命が襲います。聖人は、余命僅かの急性骨髄性白血病に罹っていました。聖人はそらに、数ヶ月外国に出張に行くと嘘をついて入院します。その間のお互いを思いやる二人の手紙のやり取りは、本当に素敵です。直筆の手紙の良さを改めて感じました。病気の進行が進み手紙が書けなくなった聖人は、危険を承知で、一晩だけという約束で最後にそらに会いに行きます。何も知らされていなかったそらは愕然としますが、泣くだけ泣いた後は、気丈に以前のように聖人に接します。その時聖人は、そらが聖人の子を宿していることを知り、喜びで大粒の涙を流します。そして「俺はもっと生きたい。そらと子供のために生きたい」と言った後、救急車で病院に運ばれ、その二日後亡くなります。奇跡が起こることを願いながら読んでいましたが、奇跡は起こりませんでした。
その後そらは、聖人との約束を守るため、2年間ニューヨークで歌の勉強をする決意のもと、無事に聖人の子供、聖一を出産します。一歳にも満たない聖一を2年間も母親に預け、聖人との約束を守るため、ニューヨークへ行くという決断は、そらにとって勇気のいる決断だったと思います。大人になった聖一は、この決断をきっと理解してくれるとの確信を持った上での英断だったのだと思いました。息子の光を10歳で亡くしたことをきっかけに夫と離婚した母親も、そらにとって聖一を預けることの出来る程、信頼出来る存在になっていたのでしょう。辛い過去を持ち孤独な二人でしたが、温かく見守ってくれる人たちもいて二人は最期の時を過ごすことが出来ました。
ニューヨークへ旅だつ前日の聖人の誕生日の2月14日、そらは、梓川の河原に小雪が舞うなか、赤いワンピースを着て、聖人から贈られた胸のぺリドットの石に手を置いて祈りながら、聖人との思い出の曲である『アメージング・グレース』を歌います。
これから歌と聖一に支えられ、強くなったそらの胸の中で、 聖人はずっと生き続けるのだと思いました。
読み終えた後、フランシス・レイによって作曲された、映画『ある愛の詩』の美しいテーマ曲を思い出しました。この曲を聴くと、映画の様々な場面が思い起こされます。
そらのハミングの「アメージング・グレース」で始まり、河原での「アメージング・グレース」で終わるこの物語のテーマ曲は、この賛美歌しかないと思いました。
これから「アメージング・グレース」を聴くたびに、この哀しくも美しい物語が思い出される、心に残る一冊でした。

今日が幸せな一日でありますように。