【小説】 島本 理生「2020年の恋人たち」【感想・あらすじ】

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ひとり言
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ご挨拶

こんにちは、こんばんは、ちまです。
最近、水車亭さんの芋けんぴにはまってます。1度食べると手が止まらなくなる美味しさです…!私は1kg入ってる物を買って小腹が空いた時に食べていますw
今日お話しするのは、島本 理生さんの「2020年の恋人たち」です。

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あらすじ

前原葵は、突然車の事故で母を亡くします。
落ち着く暇もなく、母の営んでいたワインバーを引き継ぐかどうかの選択を迫られます。
店を継ぐ決断をした葵は、雇用した従業員の松尾と共に店を開店させます。
同棲していた引きこもりの港や母の店の常連客だった幸村、雑誌の副編集の瀬尾、おでん屋を営む海伊(かい)などとの出会いや別れを繰り返しながら、その後のコロナ禍を乗り越えようと、葵は松尾と共に、前向きに生きて行きます。

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ひとり言

島本 理生さんの「2020年の恋人たち」を読みました。
2018年のある晩、32歳の前原葵は、バーで母の果乃を待っていた時、果乃の乗ったタクシーが事故にあい、心肺停止であるとの着信が入っていたことに気づきます。明け方果乃は息を引き取ります。
果乃はワインバーを営み、長年既婚者の実業家稲垣の愛人でした。葵に戸籍上の父親はいません。
葵は果乃が亡くなった後まもなく、果乃親子のことを快く思っていない義兄から、稲垣が所有するビルで、果乃が新しくオープンしようとしていた店を引き継ぐかどうかの決断を迫られます。葵は悩んだ末、店を一緒にやってくれる従業員も見つかったこともあり、会社勤務を続けながら店を開くことを決意します。会社では、上司に信頼されているしっかりとした強い女性です。
葵は、年下の港と同棲していましたが、港は会社のリストラに合い、部屋に引きこもり、葵との対話を拒み続け、やがて別れたいと出て行きます。
果乃のワインバーの常連で経営相談にも乗っていた幸村や偶然知り合った妻のいる雑誌の副編集長の瀬名、結婚を意識して一緒にスペイン旅行に行ったおでん屋を営む海伊など葵の前にはさまざまな男性が現れますが、葵はどの男性とも別れます。葵は、葛藤しながらも最後は自分の意志で理性的に判断して結論を出しています。感情に溺れることなく、自己分析することの出来る女性です。
「2020年の東京を、このお店で一緒に作りましょう」という求人案内を見て、この店で働きたいと飛び込み、店の従業員として働くことになった一歳年下の松尾君は、その後葵の力強いパートナーとなり、葵を支えます。
また義兄とは異なり、葵を慕う義妹の瑠衣と息子の波瑠や突然の離婚問題でアメリカから帰国して葵と同居することになった叔母の弓子、京都の出張で出会ったセレクトショップの店長の芹など、女性との再会や新たな出会いもあります。生い立ちの影響も大きいと思いますが、こうした、人との出会いや別れ、そして、母の店を引き継ぐ決断をしたことで、葵は自己をしっかりと持った女性になっていったのではないかと思いました。
葵の義妹の瑠衣は、葵の上司と結婚します。瑠衣のことが好きだった松尾君は失恋してしまいますが、葵の上司は、包容力があって人に気配りの出来る本当に素敵な人です。夫の犯罪行為で離婚した瑠衣と息子の波瑠にとって、かけがえのない大切な人になるのではないでしょうか。
芹は、相手の事を好きじゃなくなる日が来ることが怖いから、恋愛するのが怖い。だから、身に着ける指輪の様な形あるものが好きだと言います。
叔母の弓子は、自分は結婚生活に向いてる人間だと悟って、夫の浮気を許し離婚を取りやめます。葵も含めて、人それぞれの恋愛、結婚に対する異なる捉え方を感じ、自分に合った生き方と言うものを考えました。
オリンピックに向けて盛況になるはずのワインバーは、コロナ禍によって苦境に立たされます。葵と葵とルームシェアすることになった松尾君は、店をさまざまな工夫によって、懸命に維持しようとします。今後の二人の関係はわかりませんが、葵と松尾君は相性の良い同志のような関係だと思いました。
葵は仕事に全力を注ぎながら、自分にとって必要な愛の形を探し続けます。
人との出会いと別れ、選択を迫られた時の決断を通して、一人の女性が自立して前を向いて生きて行く物語です。
美味しそうな食べ物やワインの描写も豊富で、こちらも楽しめる一冊でした。

今日が幸せな一日でありますように。