ご挨拶
こんにちは、こんばんは、ちまです。
昔読んでいた本の新装版が発売されているのを発見しました。久しぶりに読んでみようと思います!
今日お話しするのは、川村 元気さんの「四月になれば彼女は」です。
あらすじ
4月、一年後に弥生との結婚を控えた精神科医の藤代の元に、初めて付き合った恋人のハルから、突然手紙が届きます。
合理的な付き合いで結婚をしようとする藤代と弥生でしたが、ハルからの最後の手紙によって、自分にとってお互いがどんなに大切な人であるかを気付かされます。
なぜ、恋も愛も、やがては過ぎ去ってしまうのでしょうか。失った恋から新たな愛に気付くまでの12カ月の物語です。
ひとり言
川村 元気さんの「四月になれば彼女は」を読みました。
藤代 俊(ふじしろ しゅん)は精神科医として、大学病院に勤務しています。藤代は一年後に婚約者の坂本弥生(やよい)との結婚を控え、二人で結婚式の手配など、結婚に向けての準備に追われています。そうした中の四月、大学時代に交際していたものの、お互いの心のすれ違いから別れることになってしまった伊予田 春(いよだ はる)から、ボリビアのウユニから突然手紙が届きます。手紙には、今旅をしている外国の情景や付き合っていた頃の藤代との思い出が綴られ、「最後にまた手紙を書きます」と結ばれていました。
藤代が医学部の三年生の時ハルが同じ大学に入学して、二人は写真部で出会いました。ハルの告白に始まり、惹かれ合い愛し合い結ばれた二人でしたが、先輩の男性のある事件がきっかけになり、愛し合っていながら藤代は逃げるようにハルと別れてしまいました。
藤代があんなに寄り添い愛し合っていたハルからの9年ぶりの手紙に、別れたとはいえ、あまり動揺も見せず冷静に対応している様子に違和感を覚えました。ハルと別れて、不変の愛は存在しないと自分に言い聞かせてその後を生きてきた時間の経過が藤代の心に影響をもたらしたためでしょうか。またなぜハルは9年も経って、かつての恋人に異国から手紙を出したのでしょうか。いろいろな要因を感じながら、手紙を書いたハルと結婚を控えた藤代が今後どういう風になっていくのかと引き込まれて読み進めました。
藤代と弥生は同棲して3年になり、お互いの立場も理解し合い、心地よい関係を続けていますが、2年前からは別々の部屋で別々のベッドで寝ています。お互いに惹かれるものはあるものの、合理的に割り切った関係なのかと思いました。
そうした日々を過ごす中、弥生は藤代に見せることなく、ハルからの最後の手紙を読んでしまいます。そして、自分たちの愛に対する姿勢を見直したいという書き置きを残し、突然藤代の前から姿を消してしまいます。ハルから届いた最後の手紙には、ハルの死が間近に迫っていることが書かれていました。
ハルからの最後の手紙を知らない藤代に、ある病院の医師から、伊予田春さんについてお話したいことがあるとの電話がかかってきます。医師の元を訪れた藤代は、ハルが最期の時が訪れる前に旅に出て、手紙を出していたことを聞きます。そして旅を終えた後、余命を過ごすためこの病院に入院し、最後は余力を振り絞って海に連れて行ってもらい、何枚もの朝日の写真を撮り、その日の午後眠るように亡くなったことを聞きます。
その後、藤代が弥生は帰って来る気配もないまま過ごしている時、ゲイと噂される友人のタスクが藤代に言います。「弥生さんのことちゃんと探してますか。人は誰のことも愛せないと気づいたときに、孤独になるんだと思う。自分を愛していないってことだから」と。
その日の深夜、藤代は弥生の寝室で、2年ぶりに横たわった弥生のベッドの枕元で、開封されたハルからの最後の手紙を見つけます。
手紙には『もう一度、カニャークマリに行ってみたかった。フジのことが今でも好きか、なぜ手紙を送ろうと思ったのか、よくわからないのです。わたしは、わたしに会いたかった。あなたのことが好きだった頃のわたしに』と書かれ、最後に『今フジが愛する人がいて、その人がフジのことを愛してくれることを願っています。一瞬だとしてもその気持ちを共にしたものとして』と結ばれていました。
その手紙を読んだ藤代は、二度と大切な人を失いたくないという思いで、弥生を探しにハルとの思い出の地であるカニャークマリに行きます。私は、帰国した二人はきっと、それぞれの今の思いを告げるためにハルの墓前を訪れると思いました。
ハルの手紙は、今まで合理的な付き合いをしていた二人に、本当はお互いをどれだけ大切で必要な人であるかを気付かせました。ハルの最後の手紙から、ハルが本気で人を愛した一瞬を今藤代の隣にいる人に託したいという強い思いを感じ、自分が本気で人を愛した一瞬のまま最期の時を迎えたいというハルの願いだと思いました。
読後、変化する愛の関係の後の生き方を問われたような気がしました。
今日が幸せな一日でありますように。