【感想】柚木 麻子「本屋さんのダイアナ」【あらすじ付き】

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ひとり言
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ご挨拶

こんにちは、こんばんは、ちまです。
寒くなってきましたね。外の景色も変化して散歩するのが楽しいです。
今日お話しするのは、柚木麻子さんの「本屋さんのダイアナ」です。

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あらすじ

私の名は、大穴(ダイアナ)。おかしな名前も、キャバクラ勤めの母が染めた金髪も、はしばみ色の瞳も大嫌い。けれど、小学三年生で出会った彩子がそのすべてを褒めてくれた――。正反対の二人だったが、共通点は本が大好きなこと。地元の公立と名門私立、中学で離れても心はひとつと信じていたのに、思いがけない別れ道が……。

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ひとり言

柚木麻子さんの「本屋さんのダイアナ」を読みました。
この作品は、矢島大穴と神崎彩子という、正反対の環境の中で育った二人の少女の、小学生から大人になるまでの十数年間の成長と友情を描いた物語です。
本が大好きなダイアナは、自分の名前が大嫌いです。髪も、小さな頃から母親が染めて金髪です。ダイアナの母は、16歳の時未婚でダイアナを産み、キャバレーに勤めながら、一人でダイアナを育てています。店ではティアラと呼ばれています。ティアラは、父親が競馬好きだったので、大穴と書いてダイアナと読む名前をつけたのだとダイアナに教えます。ティアラなりの愛情を持って育てられたダイアナは、母親のことが嫌いなわけではありませんが、物語に出てくるようなお母さんや、本物の良さに囲まれた生活に憧れを持っていました。
小学3年生になった新学期の昼休みに、美しい容姿のダイアナは同じクラスの女子から、名前や金髪のことで絡まれます。その時助けてくれたのは、同級生の彩子でした。彩子は、父が編集者、母が料理教室の講師をしているという家庭的な家で育った女の子です。
本好きの二人は、読書を通して唯一無二の親友になります。二人が特に好きだったのは、「はっとりけいいち」が書いた、ダイアナという少女が、魔女にかけられた呪いを自力で解き、知恵と優しさで人生を切り開いて行くという『秘密の森のダイアナ』という物語でした。この本を編集したのは、彩子の父でした。その後も二人は、悩み落ち込んでいる時、この本を思い出し勇気をもらいます。
別々の中学校へ行くことになっても、友情はずっと続くと思っていた二人でしたが、進学間近のある日、些細な誤解から彩子はダイアナに絶交宣言をしてしまいます。
その後十年間二人は、お互いのことを気にしながらも、会話することもなく、それぞれの環境の中で悩み苦しみながら成長していきます。
彩子は大学の新入生歓迎コンパで、お酒を飲まされて先輩の男子学生から、酷い目に遭わされます。彩子にもスキがあったのでしょう。小学校時代の彩子からは、考えられないことです。そのことをきっかけに、彩子は変わってしまいます。派手な格好をして、親に暴言を吐き、何とか自分を維持するために、人に対しても上から目線でしか見ることが出来なくなってしまいます。この時、ダイアナとの友情が続いていたら、こんなことにはならなかったのではと残念に思いました。
一方、ダイアナは高校卒業後、念願通り書店に就職して、その後カリスマ書店員として雑誌に取り上げられるほどになります。
大人になった二人は、ダイアナの父親は『秘密の森のダイアナ』の作者の「はっとりけいいち」だと知ることになります。
その後ダイアナは父親と会う機会を得ますが、期待はしていなかったものの、思い描いていた父親像とは大きくかけ離れた人でした。私も正直がっかりしました。
それでもダイアナは、父親が再婚してこれから生まれるという子供のために、「はっとりけいいち」のサイン会に手を尽くし成功させます。
彩子は『秘密の森のダイアナ』の魔女の呪いを解く呪文に勇気をもらい、今までの自分の過ちに気づき前を向いて歩き始めます。
サイン会の日、娘だと名乗れないまま父親と別れたダイアナに、会場に来ていた彩子は言います。「今度はあなたが呪いを解く番なんじゃないの?あなたが自分を解き放つところを、私にちゃんとみせてよ」と。少しの言い合いの後、ダイアナは父親を追いかけて、自分の名前はダイアナだとやっと名乗ることが出来ました。彩子のお陰で、ダイアナも自分で自分にかけた呪いを解くことが出来ました。
自分に今ある環境を受け入れ、悩み苦しみながらも前を向いていくことの大切さを、二人は教えてくれます。
二人が再開し、再出発するまで十年という長い月日がかかりました。彩子が悩み苦しんでいた時、ダイアナも、苦しみから逃れるため、自分で自分に呪いをかけていました。苦しい時、その辛さから逃れるため、ついそのことから目をそらそうとしてしまいます。この物語に出てくる「自分の呪いを解くことが出来るのは、自分だけ」というメッセージの重みを感じました。
読み終えた後、ダイアナと彩子が辛い時に『秘密の森のダイアナ』に助けられたように、多感な世代の人にとって、この物語が辛く苦しい時、前に踏み出す勇気を与えてくれる一冊になるのではないかと思いました。

今日が幸せな一日でありますように。