【小説】穂高 明「月のうた」【感想・あらすじ】

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ひとり言
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ご挨拶

こんにちは、こんばんは、ちまです。
先日五穀という飲食店に行ってきました。
こちらのお店は以前にも行った事のあるお店だったのですが、以前とは変わっていた事があり驚きました。
それはごはんがお茶碗ではなくお釜で届いたことです。
調べてみると五穀というお店と一人一釜五穀というお店に分かれているそうで今回立ち寄ったのが後者だったようです。
普段とは違ったごはんでより美味しく感じました。
今日お話しするのは、穂高 明さんの「月のうた」です。

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あらすじ

民子は、小学四年で最愛の母を病気で亡くし、2年後、父が再婚します。そして、それまで育ててくれた祖母も亡くなる中、民子は懸命に生きています。
民子と彼女を温かく見守る人達の物語です。
四章からなり、各章で民子、継母の宏子、亡くなった母の親友で民子の幼馴染の母でもある祥子、父の亮太、四人それぞれの視点で語られていきます。
この四人だけではなく、祖母や幼馴染の陽一、伯母、従兄など、民子を取り巻くたくさんの人達が、月のように民子の側で温かく見守っています。いつまでも優しく温かな余韻の残る物語です。
第2回ポプラ社小説大賞優秀賞受賞作です。

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ひとり言

穂高 明さんの「月のうた」を読みました。
小学四年生の時に母・美智子を癌で亡くした民子の成長と民子を温かく見守る人達の物語です。
四章からなり、各章で民子、継母の宏子、亡くなった母の親友であり、民子の幼馴染・陽一の母でもある祥子、そして父・亮太の視点で、民子が大学へ入学するまでが描かれています。
民子の大好きだった母が、楽しみにしていた夏祭りの前日に亡くなります。母が重い病気であることを知らされていなかった民子は、深い悲しみと共に戸惑います。
それから二年後、父が会社に派遣社員として来ていた十歳以上も年下の宏子と再婚します。それと入れ替わるように、それまで一緒に暮らして民子の面倒を見ていた母方の祖母は、自ら老人ホームへ入ることを希望し、入居後、半年足らずで亡くなります。
「廊下の雑巾がけができなくなったら、この家を出て自分の死に場所を考える時」と言って、潔い人生の幕引きを選択する祖母の聡明で気丈な生き方には、畏敬の念を抱きました。
父の再婚相手の宏子は家事が苦手で母や祖母とは違うタイプの女性ですが、民子は反対する理由もないと割り切って、自分なりに受け入れようとします。
民子の聡明で気配りができる一方、張り詰めて健気に一生懸命に生きる姿にいじらしさを感じ、少し辛くなりました。
余命を告げられ、小学生の民子を残して逝かなければならなかった母の美智子もどんなに辛かったことでしょう。
勉強が苦手な宏子は民子のような秀才は苦手でしたが、民子は今まで見てきた秀才とは何か違っていると感じていました。そうしたある日、宏子は民子と夜中に月夜の道を散歩しながら月を見上げて、「私はこの子のことがすごく好きなんだ」と思います。本当に天真爛漫で素直な人なんだと思いました。そして二人は、少しずつ相手を理解しながら、距離を縮めて行きます。
シングルマザーで、常識外れの子育てをしながらも、愛情を注いで宏子を育てた宏子の母親も素敵で、「本当のやさしさってのはね。自分で自分のことを全部引き受けて、落とし前をつける強さがないと生まれない。そういう覚悟や強さを持った人だけが、他人に本当にやさしくできるのよ」という言葉には、人に優しくありたいと思う自分を省みて少し恥ずかしくなりました。
美智子の親友だった祥子は、民子に学生時代に民子の母と月を見上げた思い出を語ります。そして、美智子が民子に本当の病名を言えなかった辛い思いを伝えます。それを聞いた民子は、自分だけが知らされていなかったわだかまりをやっと払拭することができ、中学生の時に出された「母への手紙」という課題テーマに、亡き母への想いを素直に綴ります。
民子にとって祥子と息子の陽一の存在は、大きな心の支えになっていると思いました。
美智子は亡くなる前、「あなたは意気地なしで寂しがり屋だからひとりでは生きられないわ。民子が落ち着いたらいい人見つけて再婚してくださいな」という遺言を亮太に残します。
何事に対しても、少し優柔不断で不器用な亮太でしたが、民子のためにも新しい家族の形を作ろうと決意し、宏子と再婚します。再婚後の宏子を見ていると、亮太が宏子を選んだ理由が良くわかりました。その後民子が名付け親になった男の子・朔望が生まれます。民子は の朔望のことを本当に可愛いと思い、朔望も民子を慕います。
小学生の時、最愛の母を亡くし、父が再婚し、それまで育ててくれた祖母が亡くなり、異母兄弟ができる。民子はそれらの事を受け入れるため、前を見て必死に生きています。
そうした民子を、周りの人達が温かく見守る姿が、月のエピソードと共に描かれていて、心に沁みます。
明日民子は、大学入学のため、東京へ旅立ちます。
どこまでも温かくて優しい余韻の残る物語です。

今日が幸せな一日でありますように。