【小説】五十嵐 貴久「For You」【感想・あらすじ】

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ひとり言
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ご挨拶

こんにちは、こんばんは、ちまです。
当然ですが、皆さんにご報告をさせていただきます。
以前、動画でご紹介した「みゃーちゃん」ですが、昨年11月に息を引き取りました。
6月に出会ってから5か月。死ぬその日の夜まで元気に過ごしていました。
みゃーちゃんにとって出会ってからの5か月間が幸せな日々であったならいいなと思います。
今日お話しするのは、五十嵐貴久さんの「For You」です。

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あらすじ

映画雑誌の編集者として働く朝美の叔母の冬子が四十四歳で急逝します。母を亡くした朝美にとって、新聞社に勤めながら生涯独身を貫いた冬子は、母親代わりの存在でした。
朝美は遺品整理をしていた時、冬子の日記を見つけます。日記には、冬子の青春時代の日々が綴られていました。
その中には、生涯をかけて愛した転校生でクラスメイトの藤城との恋も綴られていました。
物語は、冬子の日記と現代の朝美の日常が交互に描かれ、最後に時代を超えて衝撃的な真実が明らかになります。
純粋で一途な恋がもたらす、胸に迫る純愛ミステリーです。

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ひとり言

五十嵐貴久さんの「For You」を読みました。
二十四歳の佐伯朝美は、映画雑誌の新人編集者として多忙な日々を送っていました。そうした中、母を亡くした朝美にとって母親代わりだった叔母の吉野冬子が四十四歳で急逝します。冬子は朝美の母の妹で、新聞社に勤める独身のキャリアウーマンでした。
朝美は、冬子の遺品整理のため訪れた家で、日記帳を見つけます。そこには、冬子の高校時代の青春が綴られていました。
物語は、冬子の日記の物語と朝美の現代の物語が交互に描かれ、最後に驚くべき事実が明らかになります。
冬子の高校時代は、友人にも恵まれ将来の目標も持ち生き生きとしたものでした。そうした中、藤城篤が冬子の通う高校に転校して来ます。冬子は、寡黙で文武両道な藤城のことが何となく気になります。その後お互いに気になる存在になるもののなかなか距離は縮まらず、高校卒業後、二人は疎遠になってしまいます。なかなか近づかない二人の関係に歯痒い思いで読み進めました。
冬子は地元の大学に藤城は東京の大学に進学します。けれどもその後藤城の行方がわからなくなり冬子は探し続けますが、行方はわからず二年の月日が経過します。
そうしたある日、冬子の通う大学の校門の前に突然藤城が現れます。その後の二人のやり取りは日韓関係を絡めて二人の思いが丁寧に描かれていて、二人の心中が思いやられ、切ない気持ちで読み進めました。
一方で朝美は、韓流スターであるフィル・ウォンの来日に伴い、彼の取材担当となり、恋人であり仕事仲間でもあるカメラマンの草壁と共に、インタビューの準備のため奔走しています。そうした中、マスコミに対して自分の私生活を語ろうとしないフィル・ウォンが、何故か自分達の取材に便宜を図ってくれます。
日記に綴られた冬子と藤城の恋と朝美の現状が交互に描かれ、その中には予想外の伏線が張られ、最後に見事に交錯します。
冬子と藤城の恋が現代にもたらした朝美とフィル・ウォンとの驚くべき関係には、感動的で思わず唸ってしまいました。
冬子と藤城が二年の月日を経て再会した後の描写は瑞々しく爽やかでありながら切なくて、思わず感情移入してしまいました。
生涯独身を貫き、一途に藤城を愛し続けた冬子の生き方が本当に素敵です。二人の忘れ形見の朝子とフィル・ウォンには、一途に愛しあった両親の思いを胸に、是非それぞれの道で幸せになって欲しいと思いました。
心に響く素敵な純愛物語です。

今日が幸せな一日でありますように。