【小説】 宮西 真冬「誰かが見ている」【感想・あらすじ】

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ひとり言
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ご挨拶

こんにちは、こんばんは、ちまです。
実家に帰省した際には母と一緒に夜の散歩に出かけたりします。色々な話をしてる中で今回初めて両親の馴れ初めを聞くことができました。詳しくは話せませんが、母が勤勉な人で深夜まで勉強をしていなかったら出会わなかった奇跡的な出会いでした。いつか両親と両親が昔住んでいた所に思い出ツアーに行きたいです(笑)
今日お話しするのは、宮西真冬さんの「誰かが見ている」です。

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あらすじ

育児や仕事、夫婦関係など様々な悩みを抱えている五人の女性の見栄や嫉妬、思い込みが悲劇を生み出しそうになります。犠牲になりかけたのは、子どもたちです。
育児や不妊、血の繋がり、仕事、人間関係などを通して、女性であること母親であること、そして男性であること父親であることの意味を問いかける物語です。
最後は、邪険にされながらも、母を慕う健気な子どもの言葉に救われる心理サスペンス小説です。第52回メフィスト賞受賞作です。

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ひとり言

宮西真冬さんの「誰かが見ている」を読みました。
物語は、榎本千夏子の自宅に子供が通う保育園の担任から「夏紀ちゃんがいなくなりました」という電話がかかってきたことから始まります。
そして、いろいろな悩みを抱える四人の女性の視点で物語は進みます。
千夏子は、望んで授かった子にも関わらず、出産後夏紀のことを愛することが出来ず、子育てに悩んでいます。不妊治療をきっかけにブログを開き、現在は、虚偽の幸せな育児生活を書いています。
37歳の宇多野結子は、アパレルブランドに勤務し、顧客に木南夕香がいます。広告代理店に勤務している夕香は結子にとって理想の働く女性で、プライベートでも付き合っていましたが、夕香は出産後仕事を辞めてしまい、今は結子の仕事上の付き合いだけになっています。結子は子どもを欲しいと思っていますが、年下の夫は仕事の忙しさを理由に本気で考えてはくれず、結子は夫婦関係に淋しい思いをしています。
27歳の若月春花は、保育園で保育士をしています。保育園にはミポリン先生と呼ばれる先輩保育士がいます。彼女の言動で退職に追い込まれた保育士は何人もいて、保育園で彼女のパワハラを受けている春花もストレスで過食に陥り、恋人と結婚することで現状から救われようとしています。
高木柚季は、夫と娘の杏とタワーマンションに越して来て、近所のスーパーで働く千夏子と知り合います。同い年の子どもを持つ二人は付き合うようになります。柚季はママ友との付き合い方で後悔した経験があり、家族には恵まれていますが以前のママ友の存在に怯えながら生活しています。
最初は子育てや夫婦関係、仕事、人間関係などの悩みを抱える四人の関係が冒頭の千夏子の子どもが行方不明になった経緯となかなか結び付かず、今後の展開を興味深く読み進めました。
四人の女性は、保育園や千賀子が柚季の生活を自分の日常としてブログにあげていった事をきっかけに繋がって行きます。そして最後に四人と結子の顧客の夕香が絡み合い、夏紀が保育園からいなくなった事件の謎が解明されます。
夫と子供とも上手くいかなくなった夕香は、柚季に対する嫉妬から大罪を犯しかけました。犠牲になりかけたのは、何の罪もない、柚季の子どもの杏と一緒にいた夏紀でした。
自分が辛い立場に置かれた時、恵まれた暮らしをしている人に嫉妬してしまい思わぬ行動をとってしまう事があります。客観的に見れば取るに足らないことでも、当事者にとっては深刻な悩みとなり、冷静な判断が出来なくなってしまい大切なことを見落としてしまいます。
夕香はぎりぎりの所で、自分を見つけてくれた結子によって救われます。いざという時に助けてくれる人がいることの大切さを痛感し、子供たちが犠牲にならなくて、本当に良かったと思いました。
結子は夕香を問い詰めることもなく、杏と夏紀を引き取り保育園に送り届けます。そして千夏子と柚季が保育園に駆けつけた時、子供たちは迷わず母親のもとに走って行きます。言葉の暴力や酷い仕打ちを受けていたにもかかわらず、夏紀は千夏子の胸に飛び込みます。その時に杏が言った「なっちゃんは、間違えてママのところに来たから、新しいママを探しに行こうと思ったけど、やっぱり今のママがいいって。ママが大好きなんだって」という言葉に、子供が母親に求める健気な思いと共に、子供にとっての母親の存在の重さを改めて感じました。
四人の女性と夕香は、そうした子供の無垢な思いをそれぞれの立場で感じ取り、新たな一歩を踏み出そうとします。
サスペンスの中に、育児や不妊、血の繋がり、人間関係、仕事などを通して、女性であること母親であること、そして男性であること父親であることの意味を問いかける物語でした。
読み終えた後、人と比べるのではなく自分自身をしっかりと見つめ、自分にとって何が大切な事なのかを考えながら、本当の幸せを求めて生きて行きたいと感じた一冊でした。

今日が幸せな一日でありますように。