【小説】知念 実希人「傷痕のメッセージ」【感想・あらすじ】

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ひとり言
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ご挨拶

こんにちは、こんばんは、ちまです。
朝晩が冷え込みすっかり秋らしくなってきましたね。
私は金木犀の香りが大好きでこの時期はどこからともなく香ってくる金木犀の香りに日々癒されています。
いつかマイホームを建てたら庭に金木犀を植えたいです。
今日お話しするのは、知念 実希人さんの「傷痕のメッセージ」です。

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あらすじ

病理部に出向中の外科医である水城千早の父・穰(みのる)が、癌のため勤務先の病院で亡くなります。
穰は生前「自分が死んだらすぐに解剖してほしい」という不可解な遺言を残していました。
遺言に従い執刀医の大学の同級生だった刀祢紫織(とうや しおり)に立ち合い、病理解剖した結果、胃壁に謎の暗号が見つかります。
解剖後、病院に桜井と名乗る刑事が訪れ、千早は初めて父が28年前に捜査一課の刑事だった事と連続殺人犯を追う為に警察を辞め、警備員をしていた事を知ります。
千早と紫織は協力して、胃に刻まれた謎の暗号を読み解こうとする中、28年前の事件と酷似した殺人事件が発生します。
現在と過去で絡み合う謎を、千早と紫織、そして桜井刑事が解き明かしていきます。
息を呑む展開と、謎が解き明かされた後、感動の結末が待ち受ける物語です。

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ひとり言

知念 実希人さんの「傷痕のメッセージ」を読みました。
水城千早(みずき ちはや)は、純正医科大学附属病院で医師として働いています。
外科医として勤務していましたが、病院では伝統的に中堅医局員に一年間の病理部への出向を課しているため、今は病理診断の仕事をしています。
顕微鏡を覗く日々と、ほとんど面識のない同級生の刀祢紫織(とうや しおり)が指導医となったため何となくストレスを感じる日々を送っていました。
そうした中、千早の勤務する病院に癌で入院していた父の穰(みのる)が、容態が急変して亡くなります。
穰は亡くなる前、千早に「たんに血が繋がっているからといって親子になれるわけじゃない」という言葉を遺しました。母を癌で亡くし、溝が生じた父との親子関係を良くするため歩み寄ろうとしていた千早にとって、大きな衝撃を受ける言葉でした。けれどもその言葉は、穰にとって一生を左右する出来事から発せられた重い意味のある言葉でした。
穰は「死んだらすぐに解剖して欲しい」という不可解な遺言を弁護士に託していました。
遺言を実行するため解剖を担当した紫織に、千早も立ち合います。穣の胃に暗号が刻まれている事に気付いた紫織は、解剖医として彼の遺志を汲み取るため行動を起こします。暗号の最後には、「ムスメニイウナ」と書かれていました。
穰が亡くなった直後、穰の後輩だという桜井刑事が病理診断室を訪れ、「解剖しておかしなことはなかったか?」と紫織に聞きます。桜井は、28年前の少女連続殺人事件を穰と一緒に捜査していた刑事でした。
ずっと警備員だと思っていた父が28年前まで警視庁捜査一課の刑事であったということを知り、千早は戸惑います。
それでも紫織に、「穣さんの遺志を掬い上げる義務がある」という言葉に励まされ、暗号の解読に取り組みます。
紫織が普段のなりふり構わない身なりと違い、解剖時には、ダークスーツを着て化粧をし髪もセットして、「全力で執刀させていただき、学ばせていただきます」と言って真摯な姿勢で解剖を進めて行く姿には惹きつけられます。
穰が亡くなった後すぐに、若い女性が殺害される事件が起こります。千早と紫織、桜井は、28年前の少女連続殺人事件と今回の殺人事件の関係を調べ、穰と犯人の関係に迫って行きます。  
千早は父の過去から、紫織は穰の遺体に残された暗号から、桜井は過去に穰と捜査にあたった経験から、それぞれ現在と過去で絡み合う謎を、危険な目に遭いながらも解き明かしていきます。そして、全ての謎が繋がり解き明かされ、犯人は逮捕されます。
次々と現れる息をつかせない展開に、ページを捲るスピードも速くなりました。
穰が桜井に自分の死後、28年前の事件を明らかにして欲しいと、自分の身体にメッセージを残した苦しい想いが、全ての事実が明らかになった後わかります。穰の刑事として、夫として、父親として、生前は誰にも言うことの出来なかった深い苦悩を感じました。
真実は千早にとって、本当に辛いものでした。けれども、父が娘に伝えたかった言葉の本当の意味を知ることができたのは、今後の千早の生き方に大きな影響を与えたのではないかと思いました。そして、血は繋がらなくとも結ばれた親子の絆に胸が熱くなりました。
前代未聞の遺言の残し方から始まったミステリー小説でしたが、千早と穰の親子の絆、千早と紫織の友情など人間関係の奥深さに触れることのできる感動の物語でした。

今日が幸せな一日でありますように。