【小説】西 加奈子「うつくしい人」【感想・あらすじ】

スポンサーリンク
雑記
スポンサーリンク

ご挨拶

こんにちは、こんばんは、ちまです。
最近ブーツを買いました。寒い季節にピッタリのモクモクのブーツです。
今日お話しするのは、西 加奈子さんの「うつくしい人」です。

スポンサーリンク

あらすじ

他人の目を気にして、びくびくと生きている百合は、単純なミスがきっかけで会社をやめてしまう。発作的に旅立った離島のホテルで出会ったのはノーデリカシーなバーテン坂崎とドイツ人マティアス。ある夜、三人はホテルの図書館で写真を探すことに。片っ端から本をめくるうち、百合は自分の縮んだ心がゆっくりとほどけていくのを感じていた-。

スポンサーリンク

ひとり言

西 加奈子さんの「うつくしい人」を読みました。
裕福な家に育った32歳のOLの蒔田百合は、単純なミスがきっかけで、会社を辞めてしまいます。衝動的に旅立った先は、瀬戸内海の離島でした。この物語は、百合の島での5日間が彼女の過去の回想と共に描かれています。
百合はいつも他人の目や評価が気になり、自分自身で物事を判断して行動することが出来ず、周りに合わせて生きています。その主な原因は、彼女の姉にありました。
彼女の姉は、誰から見ても美しく聡明な女性でした。けれども、純真無垢な故に虐めに会い、引きこもりになってしまいます。百合はそうした姉の姿を見て、姉のような生き方はしたくないと、他人にどう思われるかを常に意識してその場の空気を読み、自分自身を隠し、周りに合わせる無難な生き方をしていました。その結果百合は本当の自分を見失い、自分自身で判断して行動することが出来なくなってしまったのです。私は、姉のようになりたくないという百合の思いの底には、聡明で美しい姉に対するコンプレックスによる嫉妬心があったのではないかと思いました。
百合は島のホテルで、風変わりで何とも冴えないバーテンダーの坂崎と、裕福で美男だけれど変わり者のドイツ人のマティアスに出会います。この二人と出会うことによって、百合は少しずつ少しずつ、自分を縛っていたものから解放されて行きます。
坂崎は、5年もバーテンダーとして働いているのに、気が利かずお酒も作れず、準備しか出来ない痩せすぎの中年の男性です。けれども彼は、百合と違って人の目を気にせず、自分が出来ないことは躊躇なく出来ないと言うことが出来ます。そして、物理学を英語で教えるような才能も持ち合わせています。そうした彼の存在は、百合に安心感を与え、百合は徐々に人の目を気にする生き方から解放されて行きます。
マティアスは、16歳の時に母を亡くし、母の莫大な遺産を相続したため働く必要もない美しい青年です。けれども彼は、自分がどういう生き方をすれば亡くなった母の希望に沿うことが出来るのかわからず、自分の人生の目標を見出せず空しい日々を過ごしています。彼は人に優しく寛容ですが、自主性に乏しく何とも頼りない男性です。そうした彼らと出会うことによって、百合の中での姉の存在位置も徐々に変化していきます。
彼らは百合のために何かしてくれるわけではありませんが、百合はこうした変わり者の二人の男性と出会うことによって、今まで頑なに距離を置いていた姉が自分にとってどんなに大切な人であるか、そして本当は誰よりも必要としていた人であることに少しずつ気付いていきます。
滞在する最後の夜、坂崎とマティアスと一緒にホテルの地下図書室で、マティアスが見たがっている写真を探すために、かたっぱしから本をめくっていくうちに、閉ざされていた百合の心はゆっくりと解(ほど)けていきます。そして百合は姉の存在を感じ、姉の優しさに気づき、二人の前で涙を流し続けます。大人になると泣くことを我慢しがちですが、泣くことによって、本来の自分を取り戻すことの大切さもあるのだと感じました。
坂崎とマティアスはその存在によって、百合に自己を取り戻すための手助けをし、百合にとって「うつくしい人」となり、百合もまた坂崎とマティアスにとって「うつくしい人」になったのだと思いました。坂崎とマティアスは、物語の中ではこれといった変化は見られませんが、百合と出会ったことによって、きっと今までとは違った生き方を見い出すのではないでしょうか。
自分自身で居続け、悲しい時にいつも側にいてくれた姉もまた百合にとって「うつくしい人」であり、心を開いた百合もまた姉にとって「うつくしい人」になったのだと思いました。そして、自己をしっかりと持ち自分の存在を認めてくれる人が、自分にとっての「うつくしい人」であると思いました。
自分を見失なわないで自己をしっかりと持っていることが「うつくしい」ことであるため、敢えてタイトルをひらがなの「うつくしい」にされたのだと思いました。
自分にとって「うつくしい人」からは、自分も「うつくしい人」と思ってもらえるよう、周囲を気にしつつも、自分自身を見失わない生き方をしたいと感じた一冊でした。

今日が幸せな一日でありますように。

コメント