【小説】宮本 輝「草花たちの静かな誓い」【感想・あらすじ】

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ひとり言
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ご挨拶

こんにちは、こんばんは、ちまです。
先日、東京スカイツリーで開催されている「ちいかわ 星ふるスカイツリー」に行ってきました。
スカイツリーに行ったら開催中だったという感じだったのですが、たくさんのちいかわイラストが見る事ができて楽しかったです♪
今日お話しするのは、宮本 輝さんの「草花たちの静かな誓い」です。

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あらすじ

小畑弦矢は、ロサンゼルス在住の叔母、菊枝・オルコットが、日本で旅行中、亡くなったとの訃報を受けます。様々な手続きのためロサンゼルスに行った弦矢は、弁護士から見せられた菊枝の公式ではない遺言状で、巨額の遺産を相続することや、27年前、6歳で亡くなったと聞かされていた従姉妹のレイラが、本当は行方不明になっていたことを知ります。
27年間、菊枝はなぜそのことを秘密にしていたのか、そしてレイラは今どこにいるのか。弦矢は、真実を追い求めます。
凄絶な真相が解き明かされる中、草花たちとの優しい対話の描写に癒されます。
ミステリーの要素を含んだ運命の軌跡を辿る物語です。

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ひとり言

宮本 輝さんの「草花たちの静かな誓い」を読みました。
33歳の小畑弦矢(おばたげんや)は、ロサンゼルス在住の叔母、菊枝・オルコットが、日本を旅行中に急死し、菊枝の残した巨額な遺産を相続することになります。
菊枝の夫・アランは、1年前膵臓癌のため他界しています。
叔母の死後の手続きを進める中、弦矢は弁護士から見せられた菊枝の残した公式ではない遺言状で、今から27年前、6歳の時病死したと聞かされていた菊枝の娘のレイラが、実は行方不明になっていたことを知ります。
ロサンゼルスの高級住宅街を舞台に、菊枝の残した遺言状の遺志を実行するため、弦矢はレイラの行方を調べ始めます。
物語は、弦矢がレイラの行方を捜し出すことを、私立探偵のニコライ・ベロセルスキー、通称・ニコに依頼することによって、大きく動き出き出します。
彼の優れた直感的な判断力により、二十七年間解決されずにいた幼児誘拐事件の謎が紐解かれていきます。
そこに隠されていた真相は、目を背けたくなるような本当に過酷なものでした。
幼い娘を実の父親である夫・アランの性的な行為から守るため、菊枝の取った苦渋の決断には、何としてでも娘を守りたいという母としての強い覚悟を感じました。子を思う強い愛情が、二十七年間の強い忍耐力を生み出したのだと思いました。
レイラをメリッサとして、信頼できるマクリード夫妻に託し、永遠の別れを告げた菊枝は、手入れの行き届いた中庭の美しい草木や花と対話しながら過ごします。そして、丹精込めたスープ作りをします。これらのことをすることで、何とか長きに渡る孤独な日々を生きることが出来たのだと思いました。
菊枝には、アランと離婚してレイラと二人で暮らすという選択はなかったのかと思いましたが、菊枝がレイラを引き取るためには、真相を公に晒さなければいけません。娘の将来を考えると、菊枝にはそのことが耐えがたかったのではないでしょうか。
レイラの不在後も、菊枝はアランを看取るまで離婚せず、一緒に暮らしていました。アランの性癖を知った上で、何故一緒に暮らすことが出来たのか理解出来ませんでした。アランのために手間暇かけたスープ作りをしたりして、まだアランに対して愛情が残っていたのか、或いは、両親や兄の反対を押し切って結婚したことへの意地があったのか、アランと離婚しないことで捜査の目を逸らそうとそうとしたのか、何れにしても、私には理解しがたい生き方だと思いました。
真実が明らかになった後の弦矢と私立探偵ニコ、そしてマクリード夫妻の対応には安堵しました。
真実を伝えることはいろいろな人を傷つけてしまうと悩む弦矢、残された人が傷つかず生きていけることをさりげなく優先させるニコ、菊枝の娘・レイラを自分達の子・メリッサとして慈しみ育ててきたマクリード夫妻の選択。それぞれの深い思いやりのある優しい描写に救われました。そして、菊枝が最期に弦矢に託した思いが報われたような気がしました。
弦矢と、弦矢とは親子ほど歳の離れていて頼れるニコとの出会いも、宿命的な縁が感じられ、菊枝の残したスープを通して今後長い付き合いとなる未来が見え、二人の仄々とした関係に心地良さを感じました。
菊枝の残した草花やスープを弦矢が受け継ぎ、菊枝の生きた証が残されます。
凄絶(せいぜつ)な真実が明らかになっていく中、草花たちとの優しさに満ちた会話で、静かに時間が流れて行きます。
ミステリー要素を含みながら、人生の軌跡を考えさせられる奥深い物語でした。

今日が幸せな一日でありますように。