【小説】東野 圭吾「透明な螺旋」【あらすじ含む感想】

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ご挨拶

こんにちは、こんばんは、ちまです。
今日お話しするのは、東野圭吾さんの「透明な螺旋」です。
東野圭吾さんは1958年に大阪で生まれ、大学卒業後はエンジニアとして勤務しながら小説を執筆されます。
1985年に「放課後」で第31回江戸川乱歩賞を受賞し、小説家としてのスタートを切られます。
1999年に「秘密」で日本推理作家協会賞を受賞し、直木賞候補に挙がって以降は、毎年のように作品が直木賞候補に選ばれ、2006年に「容疑者Xの献身」で直木賞や本格ミステリー大賞を受賞されます。本作品を含む多くの作品が映画化されています。
社会派ミステリーをはじめ、感動的な人間ドラマやSF・ファンタジーを取り入れたものなど、幅広いジャンルの作品を数多く発表されています。
謎を解き明かすことだけではなく、社会問題や人間の心の奥底に潜む葛藤や心情が繊細に描写された作品は心に響きます。
本作品は、複雑な人間関係の登場人物達の思いが深く掘り下げられた物語です。

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ひとり言

東野圭吾さんの「透明な螺旋」を読みました。
プロローグでの、終戦から三年後のある男女の出来事の描写から始まり、それから時を経て、南房総沖の海上で漂流する男性の射殺体が見つかったことを発端に物語は幕を開けます。
被害者は、同居人の島内園香から行方不明者届が出されていたことから、上辻亮太と判明します。
警察は、届けを出している園香に連絡を取ろうとしますが、園香は行方がわからず、連絡が取れなくなっていました。
このため警察は、園香が事件に関わっている可能性があるのではないかとの疑いを持ち、彼女の行方を追います。
園香が勤務する生花店の関係者も連絡が取れないと言い、園香の親友である岡谷真紀への聞き込みによって、事件当時、園香は真紀と京都に旅行中であり、アリバイが成立することが判明します。
そして園香が頼りにしているペンネーム・アサヒナナ、本名・松永奈江という絵本作家の存在が浮上して連絡を取ろうとしますが、彼女もまた行方がわからず、二人は一緒にいる可能性が高まります。
奈江は、園香の急逝した母親・千鶴子が働いていた児童養護施設で出会い、ずっと付き合い続けていて園香も子供の頃から可愛いがって貰っていました。
草薙刑事は捜査中、奈江が絵本制作に帝都大学物理学教授・湯川学の著作を参考文献として使用していたことを知り、大学時代からの知り合いの湯川に捜査の協力を依頼します。
協力を渋っていた湯川がアサヒナナの本名を聞いたことで、自ら捜査に加わります。湯川と奈江には何か複雑な関係がありそうだと思いました。
捜査が難航する中で、銀座のクラブ『VOWM』のママ・根岸秀美の存在が浮上します。秀美もまた千鶴子が勤めていた児童養護施設と深い関わりがありました。
秀美は千鶴子の遺品の人形を持った園香の写真を目にし、園香が自分の孫であると信じます。そして、上辻からDVを受けていた園香を守ろうとし、殺人を犯してしまいます。
秀美と奈江の過去や人間関係が明らかになっていく中で、二人の女性を通して、産んだ子供を自分の元で育てることの出来なかった母親としての後悔が痛いほど伝わってきました。このために、奈江をこの物語の事件に関わる人物として登場させたのではないかと思いました。
警察が園香と奈江の行方を追う中で、湯川の出生に関わる事実も明らかにされていきます。
湯川の家族や肉親への思いも描かれていて、これまでのクールなイメージとは異なる湯川の人間味のある一面が見えました。
本作品は、これまでのガリレオシリーズで湯川が科学的トリックを解明することによって事件を解決に導く手法は影を潜め、血の繋がりを論理的思考で解き明かし、事件の真相へと導いています。
ミステリーというより、複雑な人間ドラマが描かれた物語のようでした。
タイトルの螺旋を不透明ではなく透明とされていることに、作者の湯川学に対する思い入れを感じました。そして読みながら、過去に出版されたある作品を思い出しました。
これまで出版されたガリレオシリーズを再読した時、湯川のイメージが変わるのか少し心配ですが、このシリーズが今後どのような作風になっていくのかが待ち遠しくもあります。
読後、血の繋がりがもたらす、何とも言えない切なさの残る物語でした。

今日が幸せな一日でありますように