【小説】生馬 直樹「夏をなくした少年たち」【感想・あらすじ】

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ひとり言
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ご挨拶

こんにちは、こんばんは、ちまです。
私は豚汁が大好きです。寒い季節は色々なお店で販売されていて様々な豚汁を飲むのが楽しみです。
今日お話しするのは、生馬 直樹さんの「夏をなくした少年たち」です。

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あらすじ

警視庁杉並警察署の刑事である三十代半ばの梨木拓海は、遺体安置所で殺人事件の被害者と対面します。被害者は拓海の幼馴染で、二十二年ぶりの再会でした。拓海は、仲間と少年時代に犯した過ちに対する深い後悔を持ち続けていました。その過ちとまっすぐ向き合い、事件の真相を明らかにするため、故郷に帰り、二十二年ぶりにかつての仲間と再会します。
胸を締め付けられるような少年たちの心の描写が秀抜な第3回新潮ミステリー大賞受賞作です。

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ひとり言

生馬 直樹さんの「夏をなくした少年たち」を読みました。
三十代半ばの梨木拓海(なしき たくみ)は、警視庁杉並警察署の刑事です。物語は、彼が殺人事件の被害者と遺体安置所で対面する場面から始まります。被害者は拓海の幼馴染で、二十二年ぶりの再会でした。死体に対面した彼は「そうか。結局、死んだのか」と胸の中でつぶやきます。
ここから物語は、拓海が小学六年生の時に遡り、あの夏の出来事が、拓海によって語り始められます。
新潟の田舎町に暮らす小学六年生の拓海は、同級生の紀本啓と榊雪丸、三田村国実と4人組の仲間として日々生き生きと過ごしていました。
啓は容姿端麗でスポーツ万能、けれども父親は愛人を囲い、母親はそれを知りつつ浪費を重ねていて、彼はそんな家庭に嫌気がさしています。雪丸は母親がヤクザの男と出奔し、父親と祖母との三人暮らしで、学年の問題児です。国実には、「チーのにーたん、世界一」と言いながら国実から離れようとしない、四歳になる妹の智里がいます。雪丸は、いつも国実にくっついて来る智里を邪魔者扱いしていました。
彼らの二つ上の上級生に、素行の悪い東堂聖剣がいました。集合住宅に両親と暮らす彼は、小学校のプールを囲う檜に放火したことで補導されます。彼は何故か啓に敵意を向けますが、啓には思い当たることがありません。
四人は小学生最後の夏休みの思い出にしようと、花火大会を見るために花火大会当日は立ち入り禁止になる山に登ります。そこに国実から離れようとしない智里がついて来たことから、取り返しのつかない出来事が起こってしまいます。小学生最後の夏の思い出作りをするはずだった山で、彼らはこれから先の人生を左右する大きな重荷を背負ってしまいます。
今までいろいろな思いはあっても、少年時代を生き生きと生きてきた彼らを襲った、あまりにも悲しい出来事に読むのが辛くなりました。
五人それぞれが、この時から、抱えきれないほどの重荷を背負って生きています。
刑事となった拓海は、その時から二十二年後に起こった殺人事件の被害者である聖剣と対面し、過去の未解決事件と今回の事件の真相を明らかにしようと決心します。そして、二十二年間ずっと封印していた自分の心に決着をつけるため、郷里に行きます
二十二年前の花火大会の夜、山で置き去りにされた智里が殺された未解決事件と今回の事件を突き合わせていくうちに、それぞれの犯人が浮き彫りにされていきます。読み進めるうち、何度も、どうしてこんなことが起こってしまったのだろうかと切なさが蘇って来ました。一つの誤った判断が、負の連鎖を引き起こします。あまりにも悲しい結末です。
二十二年間、殺されることを望みながら生きていた聖剣。彼が啓を目の敵にする原因は、啓ではなく、啓の母親の言動にありました。子供は、大人の心ない言動に影響を受け、理性で抑え切れない程の大きな傷を心に負うことがあります。彼は、自分の犯した罪が裁かれる日を待ちながらどんな苦しみの中で生きていたのかを考えると、決して許されることのない罪を犯したとはいえ、憐れでなりません。身勝手な大人の振る舞いに、大きな憤りを覚えました。
聖剣は、殺されることによって自分の罪に決着をつけようとしました。過去の後悔を精算することは難しいと思いますが、残された四人は、過去の出来事を精算して、前を向いてこれからの人生を歩んで欲しいと思いました。
読み終わった後、少年らしく生きていた頃の少年たちの姿が浮かんで来て、現在の彼らと照らし合わせ、それぞれの人生に向き合う辛く哀しい時の経過を感じました。

今日が幸せな一日でありますように。