【ちまのひとり言】熊谷達也「ラッツォクの灯」

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雑記
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ご挨拶

こんにちは、こんばんは、ちまです。
最近雨が多いですね。
私は雨音を聞きながらのんびりする時間が好きです。
今日お話しするのは、熊谷達也さんの「ラッツォクの灯」です。

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あらすじ

高校生の翔平は、津波により両親と家を奪われ、妹の瑞希とともに仮設住宅で暮らしていた。震災の影響で環境が大きく変わり、次第に心が荒んでいく翔平だったが――。

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ひとり言

熊谷達也さんの「ラッツォクの灯」を読みました。
この物語は、東日本大震災の前後の日常を描いた「希望の海」の九編の連作短編集の中の、震災後を描いた一編です。
高校生の翔平は、両親を東日本大震災の津波で亡くし、小学六年生の妹瑞希と仮設住宅で暮らしています。
翔平は瑞希に、安全のために、必ず施錠するように言っています。瑞希は、いつも明かりをつけずにテレビを見ています。顔色は青白く、翔平が買ってきたお弁当も、いつも半分残します。そして、外出を嫌い、いつも友達と図書館で過ごしています。
翔平と瑞希は、お互いに思いやり、支え合って懸命に生きています。
そうした生活の中、瑞希は翔平に、『今年は、流失した家の跡地で「ラッツォク」を焚こうよ』と言いますが、翔平は今一つ決心がつきません。
「ラッツォク」というのは、お盆の時の迎え火と送り火に焚くオガラのことで、この地域の方言です。
翔平は、父親がラーメン屋を開業したときの開業資金が借金として残っていて、生活費を稼ぐために高校生には禁止されている瓦礫処理場の交通整理のアルバイトも頼み込んでやっています。
翔平の彼女である幸子は、NPOの協力でつくられた高校生のボランティアグループの活動に嵌まっていて、翔平にも勧めます。
けれども、自分の生活で精一杯の翔平は、棘のある口調で断ります。そのことが原因で、幸子から「もう無理」と別れを告げられます。
津波で翔平は、両親と家を奪われました。一方、幸子は何も奪われず、離婚寸前だった両親は、震災をきっかけにやり直す道を選びました。それぞれの立場で価値感が変わってしまうのは、非日常の中では、止むを得ないことだと思いました。
それからしばらくして、翔平と幸子はコンビニの前で鉢合わせします。二人は気まずい思いをしながらも、お互いに「酷いことを言い過ぎた」と、謝ります。
別れる間際、幸子が少し迷いながら「瑞希ちゃんは変わりない?」と尋ねると、翔平は「変わりないよ。今年は、瑞希と一緒にラッツォクを焚くことにしようかと思っている」と答えます。幸子は翔平の答えに何か言いたそうにしますが、そのまま立ち去ります。
幸子と別れた後、翔平は、これからは必要以上に卑屈になったり、自分の境遇を嘆いたりすることはやめようと決心し、無闇に将来のことで思い悩むのはよそうと思います。翔平は幸子と会話をすることで、震災後囚われていた思いから自分を解放することが出来、これからは前に進もうと決心出来たのだと思いました。
その日、翔平は瑞希に「今年はうちでもラッツォクを焚こう」と言うと、瑞希は「やった」と嬉しそうに声を上げます。
お盆の日、翔平と瑞希は、自宅の跡地でラッツォクを焚きます。瑞希は、迎え火の時には
「あっ、お父さんとお母さんだ」と嬉しそうな声を上げ、送り火の時には「お父さんとお母さん、帰って行ったよ。また来るねって言い残して」と、空を見つめながら言います。
そして、ラッツォクの灯が少しずつ暗くなり、送り火が終わりかけると、瑞希は「お兄ちゃんさ。わたしが死んでいるの、知っているんでしょう?」と尋ねます。
無言で見つめ合い、しばらく時間が経過した後、翔平は「うん、知ってた」とうなずきます。「ラッツォクを焚いたら、わたしが向こうに行っちゃうことも?」「うん」
瑞希のこれまでの少し不可解な行動と、幸子の何か言いたそうな態度の意味がわかりました。翔平は幸子にだけは、瑞希が生きているように話していたのです。
翔平は、どんな思いで瑞希と仮設住宅で暮らしていたのでしょう。現実と瑞希が亡くなったことを認めたくないという思いの中で、本当に辛い日々だったと思います。
瑞希は言います。「お兄ちゃんが心配だったんだ。でも、ラッツォクを焚くって言ってくれた時、お兄ちゃんはもう大丈夫だと思った。そろそろわたし、向こうへ行かなくちゃ。じゃあね、お兄ちゃん。また来年、お父さんやお母さんと一緒に戻ってくるね」
そして、灯が消えかける前に、翔平は瑞希と両親の冥福を願い、深く祈ります。
この物語は、「向こうの世界に祈りが届いたと、初めて思えた。同時に、翔平の中で止まっていた時計の針が、微かな音を立てて再び時を刻み始める」という文章で結ばれています。翔平が深い悲しみを乗り越えて、これから前を向いて力強く生きて行く姿が見えるような気がしました。
震災は、物質的にも精神的にも、数多くの物を奪い、いきなり穏やかな日常を非日常に変えてしまいます。
「 私達はこの大災害を忘れないで、この時の教訓を生かして、この様な悲しい思いをする人を一人でも減らす努力をしなければならない」という作者の強いメッセージを感じました。

今日が幸せな一日でありますように。

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