ご挨拶
こんにちは、こんばんは、ちまです。
最近私ももう少し背が高ければな…と思うことがよくあります。目下の悩みは室内干しをする際にジャンプしないと洗濯物を壁かけられない事です…。もう少し大きくなりたいです(笑)
今日お話しするのは、高樹 のぶ子さんの「オライオン飛行」です。
あらすじ
1936年、九州帝国大学付属病院の看護婦・久美子は、墜落して重傷を負ったフランス人飛行士のアンドレ・ジャピーの看護にあたることになります。言葉も通じない二人でしたが、愛し合うようになります。けれどもジャピーには、国家に関わる重大な秘密があり、別れが訪れます。
それから80年後、久美子の血を引く26歳のあやめは、残された写真と時計を手掛かりに、時計職人の鉢嶺と共に二人の過去の真相を探索します。歴史のロマンの真相とは・・・。
ひとり言
高樹 のぶ子さんの「オライオン飛行」を読みました。
26歳の里山あやめは、生まれつき体に少し障害があり、高校卒業時の自分が招いた手痛い恋愛体験のため、恋愛や結婚を諦めています。
16歳の時母親が亡くなり、その後父親は再婚しています。犬の散歩を頼まれた縁で、今はピッチェリア「ルッコラ」の二階に住み、得意のスフレケーキを焼いて、「ルッコラ」のメニューに入れてもらっています。
あやめは、美しく戦前有能な看護師として働いていた、母の伯母の桐谷久美子に憧れを抱いていました。今実家には、久美子と手に懐中時計を持っているフランス人飛行士のアンドレ・ジャピーと、後輩の島地ツヤ子が写った写真が残されています。ツヤ子の存在は、その後過去を解き明かすために、重要な役割を果たします。そしてその写真の中の懐中時計は、ジャピーから久美子へ、そして久美子の弟の祖父から母を経由して、今はあやめの手元にあります。時計は寿命が尽きたらしく動きません。
あやめは、時計を修理してもらおうと、時計店を訪れます。66歳の店主の鉢嶺一良は、2年前に妻を亡くし、店ももう閉じようかと考えていましたが、取り敢えず古い時計を預かります。このことをきっかけにあやめと一良は、時計を介して過去を解き明かす同志のような形で付き合うようになります。一良が時計の預かり代として、あやめの焼いたスフレを要求するなど、あやめと一良のやり取りは、深刻な問題の中微笑ましく、癒されます。あやめは、久美子とジャピーが病院で写っている写真を見た時から気になっていた、80年前の二人の関係を調べてみようと思います。
一良が時計を調べてみると、時計は、想像を絶する技術によって作られたものでした。そしてその中には、国家に関する重大な秘密が隠されていました。
1936年、フランスから日本へ冒険飛行していたアンドレ・ジャピーの飛行機が北九州に墜落します。重傷をおったジャピーが運ばれた先の病院で、久美子とジャピーは出会います。久美子がジャピーの担当になり献身的に尽くすうち、二人は愛し合うようになります。けれども、数ヶ月後ジャピーは全快して久美子を残しフランスに帰国します。ジャピーが帰国後、久美子はジャピーの子どもを宿していることに気づき一人で出産しますが、子どもはジャピーの元に取り上げられ、フランスに連れていかれてしまいます。
そうした事実が明らかになっていく中、あやめは二人の関係を純粋な悲恋として捉えます。一方一良は、当時の国家間の状況から判断して、ジャピーは冒険をする単なる飛行士ではなく、飛行機を利用したスパイの可能性があることを指摘します。そして、身寄りのない久美子は、国策のために利用されたのではないかと考えます。
色々な経由を経て、あやめと一良は、フランスで久美子の娘・フローレンスに会います。その時あやめは、自分の感情を久美子のフローレンスへの思いとして、フローレンスに激白します。あやめが創作して激白した言葉は、久美子の思いそのものであり、亡くなったあやめの母の思いだと思いました。
久美子は戦争を見据えた国家の政策に翻弄されましたが、ジャピーとの愛を貫き、ジャピーの子どもを出産しました。子どもを取り上げられるという悲しい結果が待ち受けていましたが、心から愛したジャピーの子どもを産んだことに、久美子の後悔は無かったと思います。
残された一枚の写真と、時計の蓋が80年ぶりに一良の技術と気迫によって開かれ、封印されたウォッチペーパーが取り出されたことを足がかりに、久美子とジャピーの過去が徐々に解き明かされていきました。そうした過程で、あやめと一良は、徐々に変わって行ったように感じました。生きることに後ろ向きだった二人が、徐々に前向きに考えるようになった気がします。
あやめは、これまで以上に美味しいスフレを焼くための研究を続け、焼きあがったスフレを一良の元に届けることでしょう。一方、一良も時計店を続け、時計の修理に力を注ぐようになり、あやめのスフレで一息つくのではないでしょうか。
過去の真実を探索しようとしたことは、それまで後ろ向きに生きていた二人の生き方を変えるきっかけになったのだと思いました。
過去のミステリーを含んだ恋愛小説というだけではなく、現在を生きる人に今の生き方を考える機会を与える作品だと思いました。
今日が幸せな一日でありますように。