【小説】白石一文「ここは私たちのいない場所」【感想・あらすじ】

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ひとり言
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ご挨拶

こんにちは、こんばんは、ちまです。
先日髪を切りました。かなり短くしたので頭が軽い気がしますw
今日お話しするのは、白石一文さんの「ここは私たちのいない場所」です。

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あらすじ

50代半ばの芹澤は、大手食品メーカーの役員として、順風満帆なサラリーマン生活を送っていました。幼少期に三歳の妹を亡くした彼は、喪失感を持ち続け、結婚していません。そうしたある日、部下の小堺の不祥事が起こり、芹澤の元部下で今は小堺の妻の珠美の策略によって、責任を取るかたちで辞職に追い込まれます。無職となった芹澤は、その後も珠美と会い続けるうち、喪失感から徐々に新しい人生の在り方を見つけて行きます。

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ひとり言

白石一文さんの「ここは私たちのいない場所」を読みました。
50代半ばの芹澤 存実は、大手食品メーカーの人事・総務担当常務で、仕事では順風満帆な人生を送っていました。彼は三歳で病死した妹の喪失感を拭い去ることが出来ず、結婚していません。芹澤の哲学者の父と画家の母は、子どもを失った責任をお互いに押し付け合い、不仲になり父親は家を出て行きます。妹を突然失ったことに加え、そうした両親を見て、芹澤は喪失感を抱いたまま大人になったため、結婚や子どもを持つことを避けるようになったのだと思いました。
ある日、部下の小堺が不祥事を起こします。そうすると、芹澤の元部下で、今は小堺の妻の珠美から連絡が入り、懲戒解雇だけはやめてほしいと懇願され、言葉巧みに誘われて関係を持ってしまいます。珠美はこの時のやり取りを録音していて、芹澤を脅かします。けれども、芹澤は小堺を懲戒解雇とし、その後社長に自分の犯した過ちを告白し、責任を取って辞職します。
不倫をしていた小堺は、その後も不倫を続けますが、珠美は小堺の資産を当てにして、今の生活を捨てて離婚をする気はありません。
無職となった芹澤は、珠美と定期的に会うようになります。芹澤は、珠美と付き合うようになって、行動的で何でもはっきり口にする珠美に引っ張られるようなかたちで、これまでの生き方が徐々に変わって行きます。付き合うようになったきっかけからすると、不思議な関係です。
そうした中、芹澤は、大学の映画サークルで出会った仲の良かった奥野が、癌で亡くなった連絡を受けます。その事を知らされた時芹澤は、人の死は誰にも知らされなくていいのではないか、と思います。妹を亡くした喪失感が、彼に死と向き合うことを避けさせているのではないかかと思いました。
珠美は、小堺の不倫相手の夫が原因で小堺が大怪我を負ったことをきっかけに、離婚をします。珠美も芹澤と付き合うようになって、今までの依存した生き方から、徐々に自立した生き方に変わっていったような気がします。
芹澤の母が心臓発作で倒れた時運ばれた病院で、偶然珠美の母が看護師として働いていて、芹澤の母を担当していました。そうしたきっかけでお見舞いに来た珠美と芹澤の母は、意気投合します。芹澤と珠美の縁と言うものを感じました。
そうした中、珠美は芹澤に、看護師になるため受験勉強を始めたと言います。芹澤も脚本の書き方を学ぶ学校に通うことを考えていることを伝えます。二人とも前向きに、残された人生の生き方について、考えるようになった結果だと思いました。
物語は、芹澤と珠美が二人でクリスマスを過ごす場面で終わります。
幼少期に納得のいかないかたちで可愛がっていた妹を亡くし人生を諦めていた芹澤は、珠美と付き合い、友人の死を知り、九死に一生を得た友人の話を聞くことをきっかけに、徐々にこれまでの自分の生き方を問い直します。かけがえのない大切な人を失い、喪失感から抜け出すことが出来ない時、その後、今自分の居る場所で、どう生きて行くかを問う作品だと思いました。
読み終えた後、これまであまり考えたこともなかった自分の死生観というものについて考えていました。

今日が幸せな一日でありますように。