【小説】森沢明夫「あなたへ」【感想・あらすじ】

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ひとり言
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ご挨拶

こんにちは、こんばんは、ちまです。
私の住んでいる所では今日は雨が降っています。
雨音を聞きながら録音するとリラックスして録音ができる気がします。
今日お話しするのは、森沢明夫さんの「あなたへ」です。

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あらすじ

富山の刑務所で作業技官として働く倉島英二は、妻の洋子を癌で亡くします。ある日、妻からの遺言があることを伝えられます。1通は、自分の遺骨を故郷の長崎の海に散骨して欲しいと書かれ、もう1通は長崎の郵便局留めで12日以内に受け取って読んで欲しいというものでした。妻からの遺言を受け取るために英二は、自家製キャンピングカーに洋子の好きだった風鈴と洋子の遺骨を乗せ、長崎へ旅に出ます。
旅先で、さまざまな過去を持つ人たちと出会うことによって、無口で堅苦しい英二も少しずつ変わって行きます。お互いを思いやる気持ちに溢れた愛と絆が描かれた、胸を打つ夫婦の物語です。

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ひとり言

森沢明夫さんの「あなたへ」を読みました。
63歳の倉島英二は、富山の刑務所の作業技官として、受刑者に木工の実技を教えています。歌手として慰問に訪れた洋子と結婚していましたが、洋子は、53歳の若さで癌のため亡くなります。洋子が癌に侵されてから亡くなるまでの二人のやり取りは切ないけれど、お互いを思いやる愛に溢れていて本当に素敵です。
洋子のいない日々を送る英二のもとに遺言サポートの女性が訪れ、洋子の遺言を伝えます。遺言書は2通あり、1通は、故郷である長崎県の薄香の海に散骨してほしいというものでした。そして、2通目は薄香の郵便局に局留めで郵送してもらうので、取りに行って欲しいとの遺言を伝えられます。受け取りの期限は12日間で、期限内に受け取らなければ、焼却されてしまいます。真面目で生きるのに不器用な英二を残して逝かなければならない洋子の思いを感じながら、読み進めました。
英二は、辞表を上司に預け、ミニバンを改造した手製のキャンピングカーに乗って、洋子の好きだった風鈴と洋子の遺骨と共に薄香を目指します。この車は、闘病中の洋子に、これに乗って一緒に旅に行こうと話していた車でした。
旅の道中、元高校の国語教師の杉野や「イカめし」販売員の田宮と南原に出会い、数日間一緒に旅をします。
杉野は元受刑者で、英二が青森刑務所に勤務していた時、出会っていました。英二はそのことに気づいていましたが口にはしませんでした。その後、杉野が再犯の容疑で英二の目の前で警察に捕まり、刑事から関係を聞かれた時、英二は躊躇なく「友達です」と答えます。杉野は、不器用だけど誠実な英二と再び出会い、英二に教えて貰った、洋子の遺した「他人と過去は変えられないけど、自分と未来は変えられる」・「人生には賞味期限がない」という言葉を胸に刻み、必ず更生し立ち直ると思いました。
「イカめし」販売員の田宮は、妻との間に深刻な問題を抱えていますが、彼もまた洋子の遺した言葉によって救われます。南原の過去は、家族を思う本当に切ないものでした。英二は旅の道中、これらの人たちと出会うことによって、これまでの無口で堅苦しい性格から少しずつ解放されて行きます。これこそ英二を心配した洋子の狙いだったのではないかと思いました。洋子の「そうそう、英二さんその調子」という声が聞こえてきそうです。
南原は英二に、薄香に行って船の手配に困ったら、漁師の大浦吾郎を尋ねるようにと紹介します。薄香に着いて尋ねたものの、吾郎は最初、船を出すことを断ります。「散骨してしまえば、墓参りに意味が無くなってしまう」という吾郎の思いからでした。英二を思いやった重い言葉です。
英二は、洋子の遺言を実行することを決心して、吾郎の船で洋子の遺骨を散骨します。洋子の願いを叶えることが出来たという安堵感と共に寂しさもあったのではないでしょうか。英二の散骨の場面は、英二と洋子の思いを感じ、本当に胸を打たれました。
『あなたへ』に始まる2通目の洋子の遺言は、英二の幸せを願い感謝を伝えるものでした。「あなたと出会えたことはわたしの人生における最良の奇跡」何て素敵なメッセージでしょう。
洋子が遺言を使って仕掛けた英二への思いが、英二だけでなく旅先で出会った人たちの人生も変えて行きます。
南原の過去を知った英二は、今の刑務官という自分の立場から、退職願いを入れた封筒を郵便ポストに投函します。英二に後悔はなかったと思います。洋子の思いに導かれた英二の旅は終わります。読み終えた後、とても満たされた気持ちになりました。
お互いを思いやり愛し愛される、切ないけれど美しい夫婦の物語です。

今日が幸せな一日でありますように。

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