【小説】辻堂 ゆめ「二重らせんのスイッチ」【感想・あらすじ】

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ひとり言
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ご挨拶

こんにちは、こんばんは、ちまです。
すっかり暖かくなってきましたね。徒歩で外出される方も増えてきて街に賑わいが戻ってきている気がします。活気がある場所をお散歩するのは楽しいです。
今日お話しするのは、辻堂 ゆめさんの「二重らせんのスイッチ」です。

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あらすじ

大手企業のシステムエンジニアとして働く桐谷雅樹は、身に覚えの全くない強盗殺人罪で突然逮捕されます。防犯カメラに雅樹にそっくりな人物が映り、DNA鑑定の結果も一致していたためです。その後、雅樹はアリバイが証明され釈放されます。
雅樹は自分の出生に疑問を持ち調べた結果、アメリカ人の養子になった一卵性双生児の基樹という兄弟がいることを突き止めます。その直後、雅樹は基樹と仲間によって拉致監禁されます。
その後、両親の過去や基樹の辛い生い立ちや基樹の来日の目的が、次々と明らかになっていきます。
冤罪や国際養子縁組制度、人種差別、産後鬱などの社会問題を絡めたほっとする読後感の残るミステリー小説です。

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ひとり言

辻堂 ゆめさんの「二重らせんのスイッチ」を読みました。
桐谷雅樹は有名大学の大学院を卒業し、大手企業のシステムエンジニアとして働いています。
両親は塾を経営していて、雅樹は両親の期待に応えるべく、幼い頃からずっと首位の成績を維持していました。結婚を考えている大学の後輩の恋人・奈美もいて、順風満帆な生活を送っていました。
そうした中、雅樹は突然、身に覚えのない強盗殺人事件の容疑で逮捕されます。
防犯カメラに雅樹にそっくりな人物が映っていて、その後の現場から採取されたDNAの検査結果も雅樹のものと一致したためです。
その後、雅樹はアリバイが証明され釈放されますが、会社からは休職を命じられます。
自分にそっくりな人物の存在とDNAの検査結果に疑問を持った雅樹は、いろいろ調べていくうちに、戸籍から一卵性双生児の基樹という兄弟がいたことを知ります。基樹は、幼い頃アメリカの夫婦に養子に出され、ジェイクと呼ばれていました。
雅樹の両親は、兄弟がいることを雅樹に明かさず、一人っ子として育てていました。DNAの検査結果が出て、雅樹が逮捕された時でさえ口を閉ざしていました。
ジェイクは仲間のナガノと共に、ある目的を持って来日していました。
そして、雅樹はジェイクの存在を知った直後に、ジェイクとナガノに拉致監禁されてしまいます。二人は雅樹に、命令に従えば一カ月で解放すると言います。奈美に危害が及ぶなどいろいろなことを考慮して、雅樹は二人の命令に従うことにします。
雅樹とジェイクは一緒に過ごすうち、シンパシーを感じるようになり、徐々に信頼関係が生まれてきます。血の繋がった兄弟であることが,自然と二人を近づけていったのでしょうか。そうした中、ジェイクは雅樹に「大いなる計画」があることを打ち明けます。
強盗殺人の犯人は,本当にジェイクなのか。強盗した二千万円はどうなったのか。「大いなる計画」とは何か。ジェイクが強盗殺人の犯人でないことを願いながら読み進めました。
読み進めるうちに、いろいろなことが徐々に明らかになっていきます。
そうした中、最初から首尾一貫して雅樹を信じている奈美が、本当に素敵な女性だと思いました。ジェイクが雅樹になりすまそうとした時、一目で雅樹ではないことを見抜いたのには脱帽です。雅樹の「人間の個性とは」という問いに奈美が返した、「異なる経験についての異なる記憶が、人間の個性を形作っているのだと思う」という言葉に、なるほどと思いました。遺伝子だけでは説明のつかない人それぞれの個性です。
ジェイクが自分の生い立ちを知り、その後の過酷な運命から、両親を恨み幸せに暮らしている兄弟を羨む気持ちは痛い程わかります。
終盤の二転三転する展開にドキドキしながら読み進めました。
二人の両親は、やむに止まれず取った過去の選択ですが、雅樹が逮捕された時には、なり振り構わず真実を告白して欲しかったと思いました。
「大いなる計画」もジェイクの口から明らかになり、二千万円の使い道も明らかになります。
最後にアメリカに戻ったジェイクの幸せな生活が後日談として描写されていて,二人の未来に向けての再出発が感じられ、読後ほっとして、何だか幸せな気持ちになりました。
「冤罪」「国際養子縁組制度」「人種差別」「産後鬱」などの社会問題を絡めたいろいろ考えさせられる物語でもありました。

今日が幸せな一日でありますように。