ご挨拶
こんにちは、こんばんは、ちまです。
先日数年ぶりに夫にバレンタインチョコを作りました。
短時間でさっとできる物がいいと思い生チョコを作りました。
見た目は微妙でしたが、味は美味しくできたので良かったです。
今日お話しするのは、ブレンディ みかこさんの「両手にトカレフ」です。
あらすじ
14歳の中学生ミアは、9歳の弟チャーリーと母親の3人でイギリスの公営住宅で暮らしています。
シングルマザーの母親はドラッグと酒に溺れて、仕事もせず子育ても放棄しています。そうした貧困生活の中、ミアはチャーリーを守りながら必死に生きています。
ある寒い冬の朝、ミアは図書館で日本人のカネコフミコの自伝に出合います。フミコの生い立ちに引き込まれ読み進めるうち、ミアはフミコを身近に感じるようになっていきます。
学校では自分の境遇を誰にも話してはいけないと思い、隠していましたが、同級生のウィルにラップのリリックを書いてほしいと頼まれたことをきっかけに、ミアの「現実の世界」は少しずつ変わり始めます。
ひとり言
ブレンディ みかこさんの「両手にトカレフ」を読みました。
14歳のミアは、イギリス・ブライトンの公営住宅で母親と9歳の弟・チャーリーと暮らしています。
母親はアルコールと薬物の依存症で、生活保護を受けているものの、お金はお酒と薬物に消えて無くなり、二人は最低限の食事も衣服も与えられず、空腹に耐え暮らしています。ミアは貧困社会の中、周囲の大人の誰も信用することが出来ず、たったひとりで弟のチャーリーを守って生きています。
そうしたある日、ミアは図書館でホームレスと思われるような男性から一冊の本を受け取ります。
その本は、今から100年以上前の日本のアナキスト・金子文子の自伝でした。
フミコは、今のミアと同じような壮絶な生い立ちでした。理不尽な扱いを受け、愛されず、心の拠り所でもあった勉学でさえ取り上げられてしまいます。それでも彼女は、仕方がないと諦めることより、世界は続いていて別の世界があると信じようとします。
ミアは、フミコの生い立ちと今の自分をオーバーラップさせながら、本に引き込まれていきます。一冊の本をきっかけにミアの人生が幸せなものになって欲しいと思いながら読み進めました。
物語は、貧困や虐待、依存症、ネグレクト、いじめ等、重いテーマを絡めながら、国も時代も違う二人の少女の人生を繋げ合わせながら進みます。
ミアは同級生イーヴィの母親のゾーイだけは信頼していましたが、あることをきっかけにゾーイに助けを求めることをやめ、誰にも頼ってはいけないと自分に言い聞かせます。まだ自分の力で生きていけない14歳の女の子に、こうした思いをさせるような社会はあってはならないと思いました。
国語の授業でミアが書いたラップ調の文章に惹かれた同級生のウィルは、ミアに一緒にリリックとラップを創ろうと持ちかけます。このことは、その後のミアの人生に大きな影響を与えます。
母親に対する怒りや失望、そして諦め、そうした感情を持ちながら、ミアはケースワーカーの判断で弟のチャーリーと離されないため行動を起こします。弟を連れての壮絶な逃避行は、胸が苦しくなりました。守らなければならないものがあると、人はこうまで強くなれるのかと心を打たれました。
駅に飾られたクリスマス・ツリーの陰に隠れるようにして眠る二人が発見された時は、これから先のことはわからないけれど、取り敢えずホッとしました。
ミアは自分達が見つかった時、「ジ・エンド」と思いましたが、何も終わってはいませんでした。
ミアとチャーリーを見守り支えるゾーイ、ゾーイに「ミアたちのこと、もっと助けていいよ」という娘のイーヴィ、ミアがフミコが受けるあまりにも酷い仕打ちに憤り覚えて書いた『両手にトカレフ』を一緒にやろうというウィル、かつてミアと似た境遇にありながら、今はそうした子供や親のため、親身になって働いているケースワーカーのレイチェルなど、ミアを見守り支える周りの人たちが、二人の幸せを願っています。
ミアもやっと自分一人ではどうしようもない時は、信頼できる人には頼ってもいいんだと思えるようになったのではないかと思いました。
作者の「今は苦しく辛くても、ここだけが世界とは限らない。必ずここではない世界があるよ。世界は変えることが出来るんだよ。諦めないで」というメッセージとともに、多くの人に今の社会の現状を知って欲しいという熱い思いが痛いほど伝わってきました。
ゾーイがミアにかけた言葉、「もう何もしなくていいの。何かをしなくてはいけないのは大人たちのほうだから」。
子供達が希望の持てない社会であってはならないと共に、子供達が大人を信じ、頼ることの出来る社会の必要性を強く感じました。
子供達が『両手にトカレフ』を持って身を守らなくても良いように。
今日が幸せな一日でありますように。