【小説】彩瀬 まる「新しい星」【感想・あらすじ】

スポンサーリンク
ひとり言
スポンサーリンク

ご挨拶

こんにちは、こんばんは、ちまです。
今年は様々な場所で花火大会が開催されていますね。私も家の近所で開催されたお祭りの花火を見たり、隅田川や長岡の花火を映像で見たりしました。
色とりどりの綺麗な花火を見ると夏だなぁと実感します。
今日お話しするのは、彩瀬 まるさんの「新しい星」です。

スポンサーリンク

あらすじ

大学時代に合気道部で同じ時を過ごした男女4人が、その後の自分の人生を模索していく8話の連作短編集です。
青子は生後数ヶ月で娘を亡くし、次の子を望む夫と離婚し、塾の英語講師をしています。
卒業後も青子と交流のある、5歳の娘のいる茅乃は、乳がんを患い手術をします。
税理士の卓馬はコロナの影響もあり、里帰り出産をしている妻と別居しています。
エンジニアをしていた玄也は、上司のパワハラで会社に行けなくなり、会社を辞め実家で引きこもっています。
そうした彼らが、あるきっかけで十数年ぶりに再会します。彼らは適度な距離を保ちながら支え合い、それぞれの苦悩や葛藤を乗り越えようとします。
心地良い距離感を保った友情が描かれた物語です。
第166回直木賞候補作です。

スポンサーリンク

ひとり言

彩瀬まるさんの「新しい星」を読みました。
大学の合気道部で同じ時を過ごした30代の男女4人がその後の人生を模索して行く8話の連作短編集です。
森崎青子(もりさきあおこ)は生後数ヶ月で娘を亡くしました。未熟児で生まれたものの突然の死亡で、原因はわかりませんでした。次の子を望む夫とは離婚し、今は塾で英語の講師をしています。子供を亡くしたことを受け入れる事が出来ず、今も胸の中にいる子供と生きて行こうと思っています。
青子と卒業後も親しく付き合っている大橋茅乃(かやの)は、5歳の娘がいます。乳がんを患い手術を受けています。
安堂玄也(げんや)は、エンジニアをしていた20代の頃、上司のパワハラで会社に行けなくなってしまい会社を辞め、実家で引きこもっています。
税理士をしている花田卓馬は、コロナ感染の影響もあり、里帰り出産した妻との関係が上手くいっていません。
それぞれの悩みを抱えている彼らが、あるきっかけで十数年ぶりに再会することになります。
この再会によって、彼らは精神的に支え合い、少しずつ前向きに歩いて行けるようになります。
日々の生活の中、様々な苦悩や葛藤が起こります。そうした中で、心の支えになってくれる人の存在は、生きて行くうえで精神的にとても助けられます。
彼らの適度な距離感が丁寧に描写されていて、とても心地良く感じ、相手の負担にならない距離の取り方が、人間関係を築く上でとても大切なことなのだと思いました。
その後、茅乃は乳がんが再発し、青子は辛い思いをしている茅乃に寄り添います。お互いを思いやる二人の会話が自然で、辛い現実の中、癒されました。
卓馬は、別居していた妻と話し合い、お互いの生活のために離婚します。
玄也は彼らと再会後、少しずつ社会復帰ができるようになり、アルバイトが出来るようになります。同僚の50代の関さんが計算が苦手なことに気づくと、さりげなく助けます。人付き合いの苦手な玄也の優しさを感じました。人を思いやることの出来る優しい人ほど、他人(ひと)によって傷付けられ易いのではないかと思いました。
茅乃は癌の再発転移の末、亡くなります。高校生になった茅乃の娘・菜緒は、闘病中の母親との関係が上手くいかず、自分は母親に愛されていなかったという辛い思いを持ち続けています。
菜緒と玄也は、茅乃の墓前で偶然出会います。玄也は、母親に嫌われていたと思っている菜緒に、茅乃が如何に娘を愛し大事に想っていたかを語り、自分達はいつでも菜緒の側にいると力づけます。
それを聞いた菜緒は、生前母親が「あなたは生涯を通じてけっして一人にはならない」と、何回も念を押すように言っていた言葉を思いだし、ちゃんと本当になったと思います。
茅乃の墓前で菜緒と玄也が出会い、本当に良かったと思いました。茅乃が自分の想いを娘に伝えるために、二人を導いたのではないかと思いました。
玄也が、目の前からいなくなった茅乃を想い、夜空の星を見ながら「そこにある星も、ない星も、光っているという意味では変わらない」という場面では、残された者がその後強く生きていく意志を感じました。
最終章の「僕の銀河」は、一筋の光が差し込み、それぞれが前を向いて歩いて行くことが伺える素敵な章でした。
いつまでも温かな余韻が心に残り、希望を見出せる物語です。

今日が幸せな一日でありますように。