【小説】君嶋 彼方「夜がうたた寝してる間に」【感想・あらすじ】

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ひとり言
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ご挨拶

こんにちは、こんばんは、ちまです。
今回はちまき君について少しお話ししようと思います。
ちまき君ですが、数か月前から急激に痩せてきてしまい心配になり、先日病院に連れて行きました。
結果は糖尿病と診断されました。あまりにも痩せてしまい一時は危険な状態でしたが、今現在はインスリン注射を1日に2回打ちながら自宅で過ごしています。
注射以外は今までと変わらず生活しているので一安心なのですが、病院からご飯の指定が入ってしまい、グルメなちまき君があまり食べてくれない事だけは少し心配です。
今日お話しするのは、君嶋 彼方さんの「夜がうたた寝してる間に」です。

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あらすじ

高校二年の冴木旭には、時間を止めるという特殊能力があります。
特殊能力者は、特別支援地区で暮らすこともできますが、旭は特殊能力者が持たれる偏見に耐え、必死に自分を演じながら普通の人と生活しています。
そうした中、二年生の教室の椅子と机が全て窓から投げ捨てられるという事件や机が全てペンキで汚されるという事件が立て続けに起こり、特殊能力者が犯人として疑われます。旭は真犯人を見つけ、自分達の疑いを晴らそうとします。
犯人は旭のかけがえのない友でした。クラスメイトから白い目で見られるようになったその友の元へ、旭は時を止め必死に走ります。
そして、夜が、目を覚まします。

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ひとり言

君嶋 彼方さんの「夜がうたた寝してる間に」を読みました。
高校二年生の冴木旭は、時間を止めることのできる特殊能力を持っています。父親も同じ特殊能力者です。時間を止めると、自分の寿命は削られて行きます。
特殊能力者は特別支援地区で暮らすことも出来ますが、旭は普通の人と一緒に生活することを望み、両親と共に普通の町で暮らしています。クラスには、仲の良い同級生や、旭が中学生の時、クラスメイトの特殊能力者に持つ偏見から助けてくれた、大切な友人の赤崎天がいます。天は生徒会に属し、成績優秀で運動神経抜群、その上綺麗な顔立ちのため,王子と呼ばれています。
特殊能力者は胸元にバッチをつけているので、一目で特殊能力者と分かります。特殊能力者は普通の人から謂れのない偏見を持たれ、辛い思いをすることもあります。旭はそうした偏見から逃げたと思われることが嫌で、生き辛さを感じながらも、誰からも楽しく充実した生活をしているように見えるよう、必死に振る舞いながら生活しています。
こうした生き方は特殊能力者でなくても、普通の人でもよくあることだと思います。私も周りに合わせて、そうした振る舞いをしている自分を感じることがあります。でも、謂れのない偏見を持たれる特殊能力者にとっては、特殊能力のない人とはまた違った生き辛さがあるのだと思いました。
旭の同級生には、他人の感情を読み取ることが出来る篠宮灯里と瞬間移動能力を使うことが出来る我妻蒼馬の二人の特殊能力者がいます。そして、彼らを土曜日のロングホームルームで指導する岡先生も、先生の中で唯一の特殊能力者です。
そうした中、二年生の教室の椅子と机が全て窓から投げ捨てられるという事件と、机が全てペンキで汚されるという事件が立て続けに起こります。
犯人として、特殊能力者が疑われます。この時の岡先生の「彼らがやったのかもしれません。でも、彼ら以外がやったのかもしれません」という言葉が印象的です。特殊能力者に偏見を持たず、普通の人と同じレベルで物事を判断して欲しいという切実な思いを感じました。
旭は偏見から自分達を守るため、事件の真相を解き明かそうとします。
事件の真相を解き明かす中で、それまではあまり打ち解けていなかった灯里や蒼馬と徐々に親交を深め、灯里と蒼馬の協力の下、犯人が明らかになります。犯人は天でした。
旭は天に犯行の動機を問います。
告白の中で天は「旭のこと大嫌いだよ,ずっと。思い上がるなよ,能力者の分際で」と酷い言葉を言い残して去って行きます。そうした言葉の裏には、中学生の時旭を助けたことをきっかけに、自分だけが旭を助けられる存在であり、旭の前ではずっと自分はヒーローであり続けたいという強い思いと、旭が自分から離れて行く怖さもありました。天は旭のことが本当は、今もずっと大好きなのだと感じました。
天と別れた数日後のクリスマスの日、旭は気づきます。今,自分が成すべきことを。
そして、幼い頃から信頼していた大切な友の本当の気持ちを知るため、時間を止め友の元へ必死に走ります。走りながら旭は思います。「この場所にいたい。それは特地区への反発心でも、くだらないプライドのためでもない。ここにいる人たちと離れがたく、ただそれだけだった」と。
物語は「夜が,目を覚ます」という一文で締め括られています。
夜がうたた寝している間に天のもとへ駆けつけた旭の思いは、言葉にしなくても、きっと天に届くと信じます。
特殊能力者も普通の人も、心の根底にあるものは同じなのだと思いました。
偏見は、正しい判断を狂わせます。
この物語はミステリーを含んだ青春小説なのですが、偏見を持つことの恐ろしさを感じ、偏見のない社会の必要性を感じました。
旭と天のラストシーンに胸が締めつけられました。

今日が幸せな一日でありますように。