【小説】中島たい子「院内カフェ」【感想・あらすじ】

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ひとり言
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ご挨拶

こんにちは、こんばんは、ちまです。
連休中は実家に帰ったり色々なリサイクルショップを巡ってみたりしました。
3つの県を車で移動してプチ旅行を楽しみました♪
今日お話しするのは、中島たい子さんの「院内カフェ」です。

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あらすじ

舞台は、総合病院の受付横にあるカフェです。
相田亮子は、土日だけこのカフェでバイトをしています。亮子はあまり売れていませんが,小説を書いています。子供を欲しいとは思っていますが、自然酵母のパン屋を営む夫との間に、子供ができません。
カフェには、医師や看護師、入院患者やその家族、見舞い客など様々な人々が訪れます。
カフェでは,皆んなに同じサービスがされます。
院内カフェの大切な役割を知ると共に、温かな余韻の残る素敵な物語です。

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ひとり言

中島たい子さんの「院内カフェ」を読みました。
7編の短編の登場人物が繋がりながら物語は進みます。
相田亮子は、あまり売れていない作家活動をしながら、土日は病院内のカフェでバイトをしています。夫の航一は自然酵母のパン屋を営んでいて、子供はいません。二人とも子供を欲しいと思っていますが、診察を受けても子供のできない原因はわかりません。しっかり者のバイト仲間の村上君と上手く付き合いながら働いています。
受付カウンターの隣にあるカフェには、医師や看護師、入院患者やその家族、見舞い客など様々な人々が訪れます。みんなカフェにとってのお客様です。
亮子はカフェを訪れるお客様に勝手にあだ名を付けています。
黄緑色のジャンパーを着て大声で同じことを繰り返す小柄な男性は、目がうるめいわしの目に似ているから,うるめ。
スマホを片時も離さない毛深い医師は、ゲジデント。
入院している夫にカフェで飲み物をぶちまけた上品な中年女性の朝子は、マダム・スプラッシュ。
外観や行為から勝手に付けています。
その他にも、折り合いの悪い兄弟を看取った男性や自分の中に別人格を作って病と闘っている少女、乳がんを患っている女性作家などが登場して物語は進みます。
自らの病気や家族の病気、親の介護,不妊治療などを受け入れなければならなくなった時の葛藤や焦り、それらを乗り越えようとする心情が丁寧に描かれています。
患者とその患者を支える家族、夫婦関係や家族関係の難しさが心に沁みます。
それぞれの人の苦悩を感じ、読みながら辛くなる描写もありましたが、飄々とした亮子や村上君の人柄や、亮子の付けたちょっと笑えるようなあだ名にホッとして、読み進めることが出来ました。
文中に『治療に関わるわけでもないし、お客が患者でも、医者でも、健康な人でも、全く同じサービスをする。そして病んでる人が、いつでも入れるように病院に寄り添っていて、でも関わらず独立して、そこにある』という院内カフェを表現した文章があります。
現実からちょっと距離を置きホッと一息つけ、自分を見つめ直すことのできる場所、それが院内カフェの大きな役割だと思いました。
私も、大切な人が辛く苦しい思いをしている時、そっと寄り添うカフェのような存在でいられたらと思いました。
クリスマスの日、カフェに「もう一杯、好きなものをこれで。残ったら歳末助け合いの箱に」というメッセージと共に残された一万円札。個人的には、ぶっきらぼうだけど患者に寄り添った治療をするゲジデントのプレゼントだと良いなと思いました。
プレゼントの「もう一杯、好きなもの」の、うるめの「お湯のS」のオーダーも新鮮で素敵です。
辛く苦しいことがあった時、ホッとできる場所があることは、その人にとって本当に救いになると思います。
読み終えた後、私も温かいクリスマスプレゼントを貰ったような気がして、「お湯のS」をオーダーしてみたくなりました。
温かい気持ちになれる素敵な物語です。

今日が幸せな一日でありますように。