【小説】村山 由佳「星屑」【感想・あらすじ】

スポンサーリンク
ひとり言
スポンサーリンク

ご挨拶

こんにちは、こんばんは、ちまです。
最近やりたい事が多すぎて困っています。やりたい事はあるのに時間が足りません。
毎日とても充実はしていますが、もう少し効率よく進められないかと日々考えています。
とりえず年末までにこれだけは終わらせるという目標をたて日々頑張っていこうと思います。
今日お話しするのは、村山 由佳さんの「星屑」です。

スポンサーリンク

あらすじ

東京の大手芸能プロダクション「鳳プロ」のマネージャーとして勤務している樋口桐絵は、ある日、博多のライブハウスで歌う16歳の少女・ミチルの声に魅了されます。
ミチルの声を忘れることが出来ない桐絵は、独断でミチルを上京させデビューのチャンスを窺います。
「鳳プロ」では、その年、専務の14歳の娘・真由を大型新人としてデビューさせることが決まっていました。
その後、喧嘩ばかりして反りの合わない二人が、ペアを組んでデビューすることになります。二人には自分達の知らない複雑な出生の秘密がありました。
正反対の性格で上手く関係の築けない二人でしたが、次第に相手の才能を認め合えるようになり、人間としても成長していきます。
昭和50年代の芸能界を舞台に、必死にもがく二人の少女と、彼女たちをスターダムにのしあげようとする周囲の大人たちの様々な思惑が織りなすスター誕生の物語です。

スポンサーリンク

ひとり言

村山 由佳さんの「星屑」を読みました。
昭和50年代の芸能界を舞台にした物語です。
三十代で独身の樋口桐絵は、大手芸能プロダクションに勤務しています。
短大卒業と同時に入社して10年以上経ちますが、仕事に意欲はあるものの、女性であるが故に何の権限も与えられず、悔しい思いを抱きながら仕事をしています。
そうした日々を過ごしていた桐絵は、自社のタレントスカウトイベントの地方大会に行った時、先輩に誘われて入った博多のライブハウスで十六歳の篠塚ミチルと出会い、その声に魅了されます。
一見すると少年のように見えるミチルの声を忘れることの出来ない桐絵は、独断でミチルを上京させ、自宅アパートに住まわせデビューのチャンスを窺います。
勤務先のプロダクションでは、事務所主催のスカウト・キャンペーンでグランプリを受賞した十四歳の有川真由をデビューさせることが決まっていました。
真由はかつての名ギタリストで、現在はプロダクションの専務取締役の有川丈児(じょうじ)の娘で、歌唱力もあり華やかな容姿をしていました。デビューに際して、有川の娘であることは伏せられています。
相異なる二人の少女に、芸能界での事情や思惑が絡んで行きます。
アイドル歌手を生み育てるための業界の事情やアイドルスターになるための厳しい訓練など、芸能界の光と影、シビアな現実が詳細に描かれていて、華やかな舞台の裏側を垣間見ることが出来ました。スターを生み出し維持するためには、本人の実力や努力、人を惹きつける魅力、そして運も必要であると共に、いろいろな思惑があったとしても、周囲のバックアップも必要不可欠だと思いました。
桐絵は、ミチルと一緒に暮らすうち、ミチルに肉親のような愛情を持つようになり、何よりミチルの声を多くの人に聴いて貰いたいという桐絵の姿には、仕事へのやりがいや生き甲斐を感じ、そうした熱意は、良い仕事をする上でとても大切なことだと思いました。
ミチルの天性の歌声を聞いたプロダクションの大御所の演歌歌手である城田万里子の一言で、真由をソロデビューさせる予定が急遽、二人にデュエットを組ませ「ティンカーベル」としてデビューさせることに変更されます。
初めは反目し合う二人でしたが、徐々にお互いの才能を認め合えるようになり、いつしかかけがえのない存在になっていきます。
ミチルの母と有川丈児の関係に端を発する二人の出生の秘密や、ミチルの母と城田万里子との関わりには驚きました。
デビュー後、歌唱力もあり魅力に富んだ「ティンカーベル」の人気がどんどん高まる中、ミチルの歌を聞き、その声に魅せられたあるイギリスの有名なアーティストから、ミチルを一年間ライブに参加させて欲しいとの依頼が入ります。
桐絵や周囲が躊躇する中、「離れている間、お互い今よりずっと巧くなって、ティンカーベルで再活動する時は、世界中をあっと言わせるんだってーそれくらいの気持ちがなくてどうするの」と、戸惑うミチルを後押ししたのは、真由でした。
ミチルの才能に嫉妬しながらも、自分をしっかりと見つめることができるようになった真由の成長を感じました。
ミチルがイギリスへ旅立ち、真由が新たにソロとしてステージに立ち歌う日が近づいて来ました。
緊張で混乱し押しつぶれそうになっている真由に、城田万里子は言います。「明後日ステージで歌う曲は、あなたのためにこそ生み出された一曲でしょ。あなたは、その曲を歌っている間だけ、ミチルというライバルから完全に自由になれるはず。私は、あなたの歌うほんとうの歌が聴きたいの」
真由がソロとしてステージに立つ日が来ました。
本番前、真由はスタッフに向かって頭を下げます。「精いっぱい歌わせてもらいますので、どうかよろしくお願いします」と。
いろいろな葛藤を経て、人間として成長した真由の姿です。
本番直前になって、真由が姿を消します。大慌てで探す桐絵の目の前に現れたのは、用意されていたステージ衣装ではなく、ミチルのような姿をした真由でした。
ミチルがいない間、自分が「ティンカーベル」を守るという真由の強い覚悟を感じました。
ミチルの音楽に対する純粋な思いや素直さ、真由の心境の変化や覚悟・・・二人の少女を通して、芸能界の華やかな一面とその裏にある影、スターであることを維持し続けることの難しさ、そしてあらゆる局面で支え続けるマネージャーの力などが詳細にわかり易く描かれていて、引き込まれて読みました。
読み終えた後は、爽快な気持ちになり、その後の二人の少女の成長を見たいと思えるような物語でした。

今日が幸せな一日でありますように。