【小説】藤本 ひとみ「君が残した贈りもの」【感想・あらすじ】

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ひとり言
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ご挨拶

こんにちは、こんばんは、ちまです。
暑いですね。あまりの暑さに日中外に出るを躊躇ってしまいます。
出かけたい所はいっぱいあるのに中々勇気が出ません(笑)
春や秋の涼しさが恋しいです。
今日お話しするのは、藤本 ひとみさんの「君が残した贈りもの」です。

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あらすじ

高校二年生の上杉和典は、数学に突出した才能を持っています。数学以外には、あまり興味がありません。
そんな彼が、別の高校ではあるものの、お互いに才能を認め合い野球部でエースをしていた片山悠飛が病気で早逝したことを知り、彼が成し遂げたかったことを探し始めます。
そして和典は、悠飛が成し遂げたかったことを知り、彼の遺志を自らが受け継ぎます。
悠飛の残したもの、読後、タイトルの深い意味を感じる物語です。

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ひとり言

藤本 ひとみさんの「君が残した贈りもの」を読みました。
高校二年生の上杉和典は、数学に突出した才能を持っていて,将来は数学界に進む道も考えています。
両親は医師で、母親は和典に医学部に進学して欲しいと思い、進路について何かと口出しをしてきます。
そうした母親と揉め家を飛び出した和典は、近くの公園で偶然、新玉東高野球部のエース・片山悠飛を見かけます。悠飛は文武両道で、和典も一目置く存在でした。和典は帰宅後、何か考え事をして疲れた様子の悠飛に声をかけなかったことを、後悔します。
まもなくして、和典は同級生の黒木から悠飛が亡くなったことを知らされます。
思わず自殺かと問いかけた和典に、黒木は病気だと言います。悠飛の死因は、急性骨髄性白血病でした。
公園で話しかけなかったことを後悔していた和典は、悠飛のことを調べ始めます。数学にしか興味がなく、人に無関心な和典にしては珍しいことです。和典にとって、悠飛はそれほど気に掛かる存在だったのでしょう。
そうした調査の中、和典は大木文武(ふみたけ)と出会います。
文武は良くない仲間と付き合っていましたが、悠飛は彼の野球の潜在能力の高さを見抜いて、経済的に豊かではない文武の家のため、野球の特待生としての手続きまでして野球部に引き入れていました。
文武には双子の姉の美香と中二の天舟(てんしゅう)、小四の龍舟(りゅうしゅう)の二人の弟がいます。両親は離婚していて、文武達は、布団店を営む父親と暮らしています。
和典は、自分の家とは全く違う文武の家庭に居心地の良さを感じ、文武や文武の家族と関わりながら、悠飛が限られた命の中で成し遂げったことは何かを模索し続けます。
そしてそうした中で、悠飛もまた、文武の家で癒やされていたことを知ります。
数学以外のことに無関心な和典が、仄かに美香に思いを寄せたり、貰ったミントを可愛がり話しかける描写に、クールな和典の中の温かな人間味を感じました。また、小学生の龍舟が思いがけない言動で和典を唸らせたり、文武の良さも人とはちょっと違う面もちゃんと把握しているのには驚きました。純真無垢な龍舟の存在が物語に温かみを加えています。
和典は、悠飛が自分の命を削ってまで成し遂げったことは何かを知るため、仲間の力を借りながら崩壊しそうな野球部をまとめ、怒りっぽく投げやりになる文武に野球を続けさせます。
悠飛は自分のグラブを文武に残していました。そのことで和典は、悠飛が自分の後継者として、文武にピッチャーとしてのポジションを託していたことを知ります。
和典は悠飛の遺志を受け継ぎ、野球部をまとめ文武をピッチャーとして、センバツの優勝まで導きます。
和典は悠飛の墓参りに行った時、悠飛の主治医だった医師と出会い、文武が境界知能だったことを知ります。境界知能者は、IQが70から84のため障害者として認定されず、健常者の中で生きていく必要があります。一生懸命やろうとしても,自分ではどうしようもない葛藤の中で、文武も苦しんでいたのです。
そして,そのことを知った和典は、悠飛が野球以外にやろうとしていたことを自分がするため,迷いなく数学ではない自分の進路を決めます。
悠飛は、多くの人の人生に影響を与えました。悠飛の残したかけがえのない贈りものは、きっと次の世代にも受け継がれて行くでしょう。
読後、最期まで諦めず生き抜いた、爽やかで強い悠飛の人物像が目に浮かびました。

今日が幸せな一日でありますように。