【感想】小川 糸「ライオンのおやつ」【あらすじ付き】

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ひとり言
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ご挨拶

こんにちは、こんばんは、ちまです。
1年はあっという間に過ぎてしましますね。気が付けば今年もあと一か月ちょっとです。
今日お話しするのは、小川糸さんの「ライオンのおやつ」です。

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あらすじ

人生の最後に食べたいおやつは何ですか――
若くして余命を告げられた主人公の雫は、瀬戸内の島のホスピスで残りの日々を過ごすことを決め、穏やかな景色のなか、本当にしたかったことを考える。
ホスピスでは、毎週日曜日、入居者がリクエストできる「おやつの時間」があるのだが、雫はなかなか選べずにいた。
――食べて、生きて、この世から旅立つ。
すべての人にいつか訪れることをあたたかく描き出す、今が愛おしくなる物語。

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ひとり言

小川糸さんの「ライオンのおやつ」を読みました。
クリスマスの日、33歳の海野雫は、冬でも温暖な気候の瀬戸内に位置し、海が見渡せるホスピス「ライオンの家」へ向かいます。雫は、癌を患い余命宣告を受け、自分の最期の場所として選んだのが「ライオンの家」でした。この物語は雫が「ライオンの家」で過ごした約一か月が描かれています。
「ライオンの家」にはマドンナと呼ばれる代表や、食事担当の狩野姉妹、医師や十数名のスタッフが常駐していて、ゲストが最期を迎えるまで徹底したケアが行われています。ライオンの家では、治療ではなく身体や心の辛さをやわらげる緩和ケアが行われています。そのため、日々の食事がとても大事な役割を担っていて、毎週日曜日の午後3時からお茶会が開かれ、ゲストが最期にもう一度食べたい思い出のおやつがふるまわれます。
百獣の王のライオンは敵に襲われる心配がなく、安心して食事をして寝ればいいという思いからこのホスピスは「ライオンの家」と名付けられました。だからゲストが最期にもう一度食べたいおやつが、「ライオンのおやつ」なのです。おやつの時間は、生きるために必要な食事とはまた違って、人の心を豊かにし、ホッとするひと時を過ごすことができる大事な時間だと思いました。
雫は、必要な手続きはすべて済ませ、必要な人との別れの挨拶も済ませ、ライオンの家で飼われている犬の六花やゲスト、ライオンの家のスタッフ、島の青年のタヒチと語り合いながら、最後の時間を自分の人生と向き合い、穏やかに過ごしていきます。
読み進めるうちに雫の容態も次第に悪化していき、覚悟はして読んでいても胸が締めつけられるようでした。
雫もライオンの家を訪れるまでには、苦しい治療をしても効果が現れない時の絶望感と闘う壮絶な葛藤がありました。誰しも明日が迎えられる保障はありませんが、限られた時間を宣告された時の衝撃は、計り知れません。それでも雫は、生きること、愛することに前向きに立ち向かいます。余命を宣告された時、人はどんな境地に陥り、どのような行動を取るのかを深く考えさせられました。死を受け入れ、充実した残された限りのある日々を過ごすことが良いのは、頭ではわかっていてもなかなか出来ることではありません。
雫は、死を受け入れ、その日が訪れる迄の日々を穏やかに前向きに生きました 。そのため、ホスピスを描いた物語ですが、暗いイメージはなく、死を感じる切なさはあるものの、読んでいて、人の優しさや温かさを感じるのだと思いました。
物語の最後に、雫が亡くなった後、遺族や友達が雫が生きていることを感じる描写がされています。それぞれの雫への想いが伝わってきて、切ないけれど、温かい気持ちになりました。
余命を告げられる怖さは想像することすら出来ませんが、死には、病気の他にも、天寿を全うして訪れる死、突然の災害や事故による死など、原因は様々です。その中には、自分で最期の時を迎える場所を選ぶことができない場合もあります。
毎日死を意識しながら生きていくのはとても辛いです。けれども、今生きていることを当然のことと思わないで、何気なく過ごしている日常を大切に感謝しながら、生きていきたいと思いました。
死を通して、生きることの意味を考えさせられる一冊でした。

今日が幸せな一日でありますように。