【小説】 中江 有里「万葉と沙羅」【感想・あらすじ】

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ひとり言
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ご挨拶

こんにちは、こんばんは、ちまです。
今回はちまきとの出会いについてお話ししようと思います。ちまきとは流星群の日に出会いました。流星群を見るため外に出ると猫の鳴き声が聞こえ、声のする方へ行くと側溝に落ちた子猫が1匹いました。それがちまきです。当時はアパートに住んでおり夜中という事もあり鳴き続けるちまきを安心させてあげるためにズボンの中に入れた所、自分の体がすっぽり入る感じが気に入ったのか眠ってくれました。その時の写真がこちらです。今思うと流星群の日に出会うなんて、なんて運命的なんだろうと思います。今では歳も取っておじいちゃんになってきましたが、彼にはまだまだ長生きしてほしいです。
今日お話しするのは、中江 有里さんの「万葉と沙羅」です。

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あらすじ

中学生の時、登校拒否になった一橋沙羅は、一年遅れで入学した通信制の高校で幼馴染だった近藤万葉に再会します。万葉に本を読むことの楽しさを教えてもらった沙羅は、自分なりに本を読むようになります。
人生の岐路に立った時、本を通じて二人が成長していく青春物語です。
宮沢賢治、伊藤計劃、福永武彦などの本を取り上げながら描かれた連作短編集です。

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ひとり言

中江 有里さんの「万葉と沙羅」を読みました。
中学生の時、登校拒否になった一橋沙羅は、同級生より一年遅れで都立の通信制高校に入学します。
そこで、幼い頃隣に住み家族ぐるみの付き合いのあった、同い年の近藤万葉と再会します。最初は、沙羅を無視していた万葉ですが、沙羅が話しかけるうちに徐々に打ち解けて行きます。本好きの万葉に少しでも近づきたいと、これまで本にあまり興味のなかった沙羅が少しずつ本を読むようになります。
沙羅は万葉に、中学生の時仲良くなったと思っていた同級生達から、金品を要求されるようになって登校拒否になり、通信制高校に入学してもう大丈夫かと思っていたけれど、その子達を見かけてまた学校に行けなくなってしまったことを打ち明けます。そして万葉は、引っ越し後両親が別居して母親と暮らしていたが、小六の時母親が亡くなり、父親も再婚して海外勤務になったため、古本屋を営む父親の弟の叔父さんの世話になり、そこで働いていることを沙羅に話します。二人とも自分の居場所を探し続けています。こうした二人にとって、迷ったり、悩んだりした時、本はなくてはならないものになったのだと思いました。
二人が幼い頃読んだ「ごん狐」の最期を、沙羅は「ごんは、兵十に最後気づいて貰って嬉しかったんじゃないかと思う」と言います。そしてその言葉を聞いて万葉は「物語は変わらなくても、解釈が変わったら、これまで感じたことのないような幸せな気持ちになった」と言います。両親が別居したり母親を病気で亡くしたりと、辛い思いをしてこれまで生きてきた万葉は、沙羅の解釈を聞いて随分救われたのではないでしょうか。同じ本を読んでも、読者によって、受け止め方に違いがあります。同じ読者でも、一度目と二度目でまた違う受け止め方をすることもあります。これもまた、本の面白味ではないかと思いました。
万葉と沙羅は、お互いに自分にとって大切な人と思っているようですが、今のところ恋愛感情はないようです。二人の間に、恋人とも兄妹とも友人とも違う独特の空気感を感じました。沙羅の「好きと言う言葉にも、もっと細かい言葉があればいいのに」と漏らした一言に二人の関係性を感じました。
本を通じて語り合う二人を、万葉の叔父の正己は温かく見守っています。正己は、万葉の父とは異母兄弟で、正己にも辛い時期がありました。それなりの理由はあったのですが、いきなり、万葉に何の連絡も無く店を臨時休業にして九州に行ったりと人騒がせな叔父さんですが、時に的確なアドバイスをしてくれる万葉にとって頼りになる人です。
万葉は、卒業後通信制の大学に進学し、万葉のことを気遣ってくれる同級生達もでき、沙羅にも本好きの友人ができます。
二人は、お互いに思いやりながら、刺激し合いながら、本を通して前を向いて成長していきます。
作中に、宮沢賢治、伊藤計劃、福永武彦、ディケンズなど実在する作家や作品が多く登場するのも、その時の万葉と沙羅の気持ちを表すために重要な役割をしているように感じました。
改めて本の魅力を再認識した物語でした。

今日が幸せな一日でありますように。