【小説】岩井 圭也「永遠についての証明」【感想・あらすじ】

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ひとり言
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ご挨拶

こんにちは、こんばんは、ちまです。
暑い日が続きますね。外出する際は日焼け止めを塗って外に出るのですが、最近はとても汗を掻くので日焼け止めの効果があるのか心配になります。
また、日差しが強すぎるので熱中症対策に帽子や日傘も使用しています。皆様も外出する際は熱中症に気を付けてくださいね。
今日お話しするのは、岩井 圭也さんの「永遠についての証明」です。

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あらすじ

三ツ矢瞭司は、天才的な数学の才能を持っています。
彼は特別推薦生として入学した大学で、熊沢勇一と斎藤佐那と出会います。類い稀な才能を持つ瞭司に二人は惹きつけられ、三人は共同研究で画期的な成果を上げます。
けれども、瞭司の他の人には理解出来ない程の才能は、周囲の人々の人間関係を歪ませて行きます。
周りから人々が去って行き、孤独の中、酒に溺れながら瞭司は数学に没頭し、未解決問題「コラッツ予想」の証明と思われるノートを残します。
出会いから十七年後、ノートを手にした熊沢は、荒んでいく瞭司を知りながら突き放した贖罪を胸に、ノートの解析に挑みます。
それぞれの立場の人々の感情の揺れ動く様が描かれた物語です。
第9回野性時代フロンティア文学賞受賞作です。

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ひとり言

岩井 圭也さんの「永遠についての証明」を読みました。
物語は、六年前に亡くなった三ツ矢瞭司が残した、三百ページ以上に及ぶ『以下にコラッツ予想の肯定的証明を示す』と書かれた研究ノートの存在から始まります。
瞭司は、数学に突出した才能を持っていました。数学を知覚することの出来る数覚があり、その才能を見出した高校の数学教師の計らいで小沼教授を介し、特別推薦生として大学に入学します。瞭司の数学の才能を理解してくれる小沼教授との出会いは、瞭司に大きな影響を与えました。
そしてその大学で、同じ数学を学ぶ特別推薦生の熊沢勇一と斎藤佐那と出逢います。
数学以外に興味がなく、友達のいなかった瞭司にとって彼らは数学のことを話し合うことの出来るかけがえのない友達になります。
小沼教授の下、瞭司は、彼らとの共同研究を筆頭執筆者として発表し、画期的な成果を上げます。
そうした中、恩師である小沼教授が理学部から国数研に移り、熊沢や佐那とも徐々に距離が生まれてきます。
教授が瞭司の才能に触発され、もう一度研究に没頭したいと転籍したり、数学を通して友情を築いていた彼らが、自分にはない数学的才能を持つ者に対する嫉妬心などにより、その関係が歪んでいく様は理解出来なくはありませんが、類い稀な才能を持つ者の孤独感を痛い程感じました。
才能が他の人には理解されない範囲にまでいくと、周りから人は去って行き、天才が故の孤独が訪れるのでしょうか。
言い知れぬ孤独の中、瞭司は数学にのめり込んで行きます。誰にも理解してもらえない孤独感から逃れるためには、そうするしかなかったのでしょう。
そして、深い孤独の中、アルコールを飲めなかった瞭司が数学に没頭するため、アルコールの力を借りるようになります。そしてそうした荒れた生活を続けるうち、瞭司はアルコール中毒になってしまいます。それでも瞭司は数学を追究し続け孤独の中、研究ノートを遺し、肝硬変のため亡くなります。
そのノートは、瞭司と出会ってから十七年後、遺族から熊沢に託されます。
かつて熊沢は、瞭司の数学の才能を目の当たりにし圧倒され、瞭司とは別の分野の数学に進み、瞭司の荒れた生活を知りながら自分の生活を守るため、瞭司の助けを無視して瞭司を突き放しました。熊沢はそうした過去に、瞭司を追い詰めて殺したのは自分だと、強い贖罪を感じていました。
その後悔を胸に、熊沢は瞭司の残したノートに挑む決意をします。それから、瞭司の数学への思いの詰まったノートの解析に向けた闘いが始まります。
熊沢は自分の選んだ分野が瞭司のノートの解析の鍵になっていることに気づき、発表に向けて理論を組み立てていきます。その様は、かつての瞭司を彷彿とさせます。
熊沢は瞭司の証明の解析を発表する最中、瞭司とはもう意思疎通が出来ないことを感じ、彼が亡くなったことを実感します。
熊沢の渾身の力を込めた発表の描写は、作者の描写力に圧倒され、熊沢以上に作者の瞭司に対する熱い想いを感じました。
瞭司の生きた証は残り、数学を通じて疎遠になってしまった彼らが、漸く数学で繋がりました。そのことにより、より一層瞭司には、数学者として生き抜いて欲しかったと思いました。
天才数学者の孤独・苦悩・葛藤の末の壮絶な死の後、これから生きていく人々にとって、希望の見出せる終わり方に救われた思いがしました。
読み応えのある一冊でした。

今日が幸せな一日でありますように。