ご挨拶
こんにちは、こんばんは、ちまです。
今日お話しするのは、住野よるさんの「青くて痛くて脆い」です。
住野よるさんは、「君の膵臓をたべたい」で2015年にデビューされた男性作家です。
同作品は、2016年「本屋大賞」第2位を初め、多数のランキングで上位に選出されベストセラーになって、映画化やアニメ化もされています。
多感な思春期の人間関係や心情が、わかりやすく心に響く言葉で繊細に描写された作品に引き込ます。
多くの作品が、映画化、アニメ化、漫画化されており、本作品も、吉沢亮さんと杉咲花さん主演で映画化されています。
ひとり言
住野よるさんの「青くて痛くて脆い」を読みました。
大学一年生の田端楓は、大学の講義で同学年の秋好寿乃と出会います。
秋好は、授業中に青臭い理想論を発表するため、周りからは煙たがられていました。
人に不用意に近づかない事と誰かの意見に反する意見をできるだけ口にしない事の2つを信条にしている楓は、そうした彼女には関わらない方が良いと思っていましたが、食堂で声をかけられたのをきっかけに話しをするようになります。
自分の理想を追求しようとする秋好が満足のいくサークルが見つからない中、楓がふと、「自分でサークルを作ったらいい」と言ったことから、自分たちの理想を追求するための新たなサークルの設立を二人で目指すことになります。
サークル名の「モアイ」という名前は、その時楓が着ていたモアイのTシャツと、神秘的で不明瞭な意味合いから秋好がつけました。
楓は次第にモアイは当初の理想から変わったと感じはじめ、秋好と論じることもなくモアイを脱退します。そして、彼女との交流もなくなります。
楓の信条が、自分の思いを秋好にぶつけることを躊躇させたのではないでしょうか。この時、楓が真っ向から自分の思いを秋好にぶつけていたら、モアイや秋好との関係も変わっていたのではないかと思いました。
理想に燃え設立したモアイでしたが、徐々に規模が大きくなり、いつのまにか学生の就職活動支援をメインにするサークルに変わっていました。
大学四年生になり就職先も決まった楓は、秋好と共にモアイを作った自分の責任を感じ、設立当初の理想のモアイを取り戻すため、現在のモアイを壊し再構築することを決意します。そしてその手段として、モアイを嫌っているバイト友達の董介と共にモアイのスキャンダルを探すためにモアイに接近します。
モアイを脱退後2年半経った今、楓はモアイの中でヒロと呼ばれている秋好との関係にけじめをつけようとしているのだと思いました。
モアイのスキャンダルを掴んだ楓は、それをネットに流し拡散され、モアイは大学から処分を受けることになります。楓のやり方に疑問を持った董介は、モアイを壊す手伝いから降ります。そうした董介に狡さは感じられず、共感を覚えました。
モアイの部員説明会の日、楓は秋好と出会います。二人は、理想を叶えるための手段を通して口論となり、楓は「お前と出会わない方が幸せだった」という言葉を残してその場を立ち去ります。
この言葉は秋好を深く傷つけ、彼女は説明会で突然モアイの解散を宣言し、「理想を信じてきたけれど、私は傷つけてきてしまった人のことを無視することはできません」と述べます。
その言葉を聞いた楓は、秋好に抱いていた怒りが激しい後悔へと変わっていく自分を感じます。自分の正義や理想が、意図しないところで秋好を傷つけていたことに気づいたのでした。
理想と現実のギャップは、社会生活を営むうえで避けては通れません。
戦争のない世界が理想ですが、現実には戦争は無くなってはいません。難しい事ですが、現実を踏まえながら、理想に近づく努力をし続けることの重要性を改めて感じました。
楓は、自分の取った行動を後悔し、これからの自分の生き方を模索します。そして、モアイを必要としている人たちのために奔走します。
社会人になってモアイを受け継いだ団体の交流会に参加した楓は、学生からの「学生時代に成長した出来事を教えてください」との質問に、大事な人を傷つけたことへの後悔とそのことから学んだことを語ります。
その後の休憩時間、秋好を探し見つけた楓は傷つくのが怖いと思いながら、彼女の後ろ姿を追いかけます。そして拒絶された時は、「もう一度ちゃんと傷つけ」と思います。彼が精神的に強くなり、成長した第一歩だと思いました。
青春時代の「青くて痛くて脆い」感情や人間関係、そしてその後の成長、理想と現実との葛藤、大学のサークルの在り方など、モアイを通して様々な要素が組み込まれた物語でした。
楓と秋好も傷つき苦しみながら、葛藤の末、成長していきます。その時々の状況に対する気づきの大切さを感じました。
楓の信条もきっと前向きな新たなものに替わるのではないでしょうか。
今日が幸せな一日でありますように




